COIN TOKYO

  • 2018/05/09
  • 2018/05/09
  • コイン東京編集部 新崎優太

米国証券取引委員会(SEC)のコミッショナー「仮想通貨の過度な規制を控えて、発展を見守るべきだ」

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SECコミッショナーのHester Peirce氏は、5月2日にロサンゼルスで魅力的な演説を行いました。成長著しいICO市場と仮想通貨業界について、規制当局はすべてのプロジェクトをコントロールしようとせず、必要に応じて行動を取るライフセーバーとしての役割を担うべきだと主張しました。また有価証券についても言及しています。

Peirce氏は詐欺行為への取り締まりの重要性を認識している一方で、執行措置やルール制定について、SECの現在のアプローチ方法に言及しました。

理解を深める必要がある

「最善の道は、規制当局が強い好奇心をもってICOやトークンを研究することです。これらの新技術について学び、理解を深めるために必要なスタッフを雇用するべきです。これまでのところ、本件に関するSECの報道のほとんどは、私たち執行部主導であることを残念に思います。」

同氏のスピーチは、SECの有価証券トークン部門への参加を呼び掛けています。同部門では伝統的な有価証券の項目の再考に着手していると述べています。有価証券は、インターネットがまだ存在していない何十年も前に作成された規則で定義されています。

Peirceコミッショナーは強い口調で質問を投げかけます。

「私たちは注目の集まる問題に直面しています。これらのコインは何なのか?ICOで使われるコインはどう定義されるのか?有価証券か? ICOは有価証券を提供しているのか?法律を遵守するためには、提供されるトークンはSECに登録されるべきか、免除されるべきか?開発陣が売却した場合、証券取引法に抵触するのか?」

規制当局にとって、革新と変化はその導入に躊躇する傾向があるため、常に挑戦であると考えています。

「ルールは過去の技術に対応して成長してきましたが、規則の考案やその効果を計測するのは困難です。しかし、新技術の展望は巨大すぎて簡単に理解できるものでありません。私は今日、皆さまに協力をお願いするためにここにいます。SECが暗号技術の詳細を学び、素晴らしい暗号技術に対する規制上の障害について考えるために。どうすればSECはより良いライフガードになれるでしょうか。」

どのような機能を持てば、有価証券に該当するのか?

Peirce氏は、トークンの形式ではなく機能が規制ルールを検討する際に重要だと考えています。
「デジタルトークンは金属ではなく、触れることができません。これらは一体何でしょうか?形而上学的には、確立された過去の規範に挑戦する未来への玄関口であるかのように称されることがあります。物理的には一連のコードです。機能的には、様々です。そしてそれが挑戦です。」

仮想通貨は、お金のように機能したり、何らかのサービスを利用する手段として機能したりします。または、商品と考えられるかもしれません。Peirce氏によると、ICOは最も有価証券的なものだと指摘しました。

「開発チームは資金調達の手段としてICOセールを行います。例えば、環境を構築する前に、コインを潜在的に交換媒体として、交換を実行または追跡する手段として使用し、コインを販売する環境を構築したいと考えるかもしれない。

「トークン販売で得た収益は、いつか実現するシステムの構築に使用されます。販売時に機能性を持たないコインは、完全に実現したコインよりも購入価格が安いでしょう。結局のところ、ホワイトペーパーで紹介されている段階のトークンと、出来上がっているトークンのどちらにより多く資金を投入したいでしょうか?トークンの形式は、環境が実現されているかどうかにかかわらず違いはありません。しかし、機能には確かに違いがあります。」

すべてのICOを一様に規制しない

ICO市場は現在証券として定義する一方で、Peirce氏は最善のアプローチについて慎重になっています。

「すべてのICOを一様に規制しないよう注意が必要です。最善の道は、各ICOの事実と状況を把握することです。」

Peirceコミッショナーは変化を受け入れる意思があり、イノベーションを促進することによる経済的利益を理解している事は明白です。それでも同氏はSECの5名のコミッショナーのうちの1人にすぎません。ジェイ・クレイトン議長は、有価証券ではないICOを見たことがないと述べました。しかし、同時に既存の証券法に当てはまらない、真のユーティリティトークンの可能性を示唆していました。

Peirce氏は他の監督機関と協力して、法整備の検討を進めていますが、世界的なデジタル詐欺の横行を恐れた極端な規制によって、フィンテックの革新に悪影響を及ぼす可能性を危惧しています。

イノベーションは創造的な起業家が推進するべきで、政府規制の枠外で発生すべきだと考えています。「イノベーションのための許可証を付与する」といった、SECの役割は不要であるとして、革新的な業界の敵となるべきでも、開発を制御すべきでもないと宣言しました。

「当局は新技術に精通していないために、劣悪な規制を生み出さないように注意しなければならない。真に革新的なものが登場すると、規制当局はイノベーションがもたらす損害のみに焦点を当てがちです。それは人々の生活を改善する機会を完全に逃すリスクがあります。新技術はしばしばリスクを伴います。開発者が適切な安全措置を構築するには時間と経験が必要です。」

スピーチを終えて

ワシントンDCに戻って、SECコミッショナーPeirce氏は、規制サンドボックスについてのユースケースを公式サイトに更新しました。サンドボックス(sandbox)とはコンピューター用語で、新たなプログラムを安全な領域で動作テストをする、セキュリティ機構を指します。公式サイトは、スピーチの内容を補足して、仮想通貨の実験的な開発促進に向けた、前向きな枠組みを設計してきた各国の先行事例が紹介されています。

以下はその抄訳です。

「国内外の多数の先見的な規制当局が、規制サンドボックスを設けてきました。

1、例えば、英国では、金融コンダクト・オーソリティ(FCA)が、『企業が実際の市場で革新的な製品、サービス、ビジネスモデル、配送メカニズムを実際の消費者とともにテストできる』規制サンドボックスを運用しています。

2.アブダビの『RegLab』は2016年後半にイノベーターによるフィンテック計画の開発において、参加者に過度の規制負担をかけることのない安全なテスト環境の構築を可能にしました。

3、シンガポールの金融庁も同様に、有望なイノベーションが市場でテストされ、シンガポール国内外でより広く採用されるようにするためのフィンテックの実験を促進しました。

4、SECの姉妹機関である米国商品先物取引委員会(CFTC)はクリス・ジャンカルロ会長の下で『Lab CFTC』を立ち上げました。これは、フィンテックのイノベーションコミュニティとCFTCの交流拠点となるように設計されています」

5、そして、このL.A近郊のアリゾナ州は最近、実際の市場で革新的な製品、サービス、ビジネスモデル、および配信メカニズムをテストする目的で、フィンテックの国レベルの規制サンドボックスを提供しています。

ビーチでライフセーバーは、海岸の状況を監視しています。しかし、砂の城の製作者のすべての意思決定を監視することは不可能です。ライフセーバーの立場でできることは、危険な活動に気づき、ホイッスルを吹いたり、必要に応じて直接介入すること等です。ビーチのルールに関する質問に答える準備ができていて、危険な潮流やサメの警告に赤旗を立てられる立場であるべきです。」

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