証券会社のことを英語でSecuritiesといいますが、セキュリティとは(有価)証券のことです。
一般的に、ICOを実施するとトークンを配布しますが、このトークンが証券として価値があるとセキュリティトークンとなります。
証券として価値があるということは有価証券ということであり、トークン自体が現実世界の価値の裏付けとして利用されるということでもあります。
ICOは新しい資金調達手段として大注目されています。2017年後半から2018年年初にかけては「ICO祭り」などと持てはやされ、仮想通貨人気に便乗する形でICOプロジェクトが乱立することになり、トークンを発行すれば飛ぶように売れて簡単に資金調達が実現できました。
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本来、セキュリティトークンが有価証券であるならば、SECのような機関から厳しいチェックがあるのですが、誰の管理も受けない仮想通貨のICOではホワイトペーパーのみで資金調達が可能です。
必然的に、こんなうまい話が放っておかれるわけもなく、ICOとは名ばかりの詐欺通貨が横行することになります。世界中には250を超える仮想通貨取引所が誕生していますが、今年発行されたICOトークン(上半期で300種類以上)の70%は未だ上場していません。
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SECでもICOトークンの多くは詐欺である可能性が高いとみており、今後有価証券、つまりセキュリティトークンとして認定されると、株式などと同様にSEC監視下に置かれることになります。
それでは、仮想通貨トークンはすべてセキュリティトークンかというと必ずしもそうではなく、トークン自体に価値を持つセキュリティトークンに対して、それ自体に有用性(ユーティリティ)を持つトークンのことをユーティリティトークンと呼びます。
具体的な違いが明確に定義づけされているわけではありません。何故なら、最初はユーティリティトークンだったものが、途中からセキュリティトークンに変貌していくことがあるからです。
以前より、仮想通貨というよりは有価証券ではないかと指摘されていたリップル(XRP)は限りなくセキュリティトークンに近いと言われていますが、2018年6月にSECはビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)はユーティリティトークンであると認定しました。
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SECの見解としては、今後の仮想通貨は「分散型」かどうかが極めて大きなポイントになるとしています。
6月にビットコインやイーサリアムをユーティリティトークンであると公表したのは、その分散型ネットワークを認めているからであり、そこに公共性が認められるため有価証券ではないと認定されたのです。
しかし、リップルのように会社が半分以上のリップル(XRP)を握っていて、会社の運営とブロックチェーンが切り離せないとみなされた場合には、セキュリティトークンと認定される可能性があります。
セキュリティトークンと認定された場合にはどのようになるのでしょう。有価証券と認定されたことになり、SEC監視下に置かれ、資金調達には厳しい審査を受けることになり、上場できるのも一般の仮想通貨取引所ではなくSEC認可の取引所(あるいは米国以外の当局が認めたセキュリティトークン取引所も)になってしまいます。
つまり、ICOから限りなくIPO(株式新規公開)に近い資金調達方法となりますので、上場できるのは取引所の厳しい審査をパスしたトークンのみとなり、詐欺通貨が紛れ込む余地はなくなります。これにより投資家は安心して有望なトークンに投資することができます。
しかしながらこのことは、セキュリティトークンと認定された時点で、誰からの管理も受けずに中央集権を持たない仮想通貨という定義からは少し逸れてしまうということです。
従って、ICO最大のメリットである「誰もが簡単に参加でき・投資できる」というクラウドファンディングの要素は薄くなってしまうため、仮想通貨・ブロックチェーンがめざす分散化とは異なる様相となります。
このようにセキュリティトークンは、サトシ・ナカモトの論文からは少し乖離したものとなってしまいますが、仮想通貨の現状が詐欺通貨の横行とマネーロンダリングの場と化していることから、一定の規制は必要と考える人も多いのが実情です。
SEC(米国証券取引委員会)の目的とは、セキュリティトークンとユーティリティトークンを区別することではなく、投資家が安心して市場で取引できる環境づくりにあり、具体的には詐欺通貨やマネーロンダリングの排除などとなります。
そのための規制なのですが、これは同時に仮想通貨の魅力の大半を奪ってしまうことになり、仮想通貨は既存の株式と同様の金融商品となってしまいます。
つまり、規制以外の方法で、投資家が安心して市場で取引できる環境づくりが実現できたらよいわけですが、2018年に入って、次世代テクノロジー問題は新たなテクノロジーで解決すべきとでもいう、新たなプロジェクトや動きが出てきています。
ポリマス(Polymath)とは、イーサリアムベースのECR互換20トークンで、有価証券をブロックチェーン上に移行させるためのプラットフォームとなります。
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ポリマスプロジェクトの目的は、簡単に言ってしまうと、前述のようなSECなどの機関の規制という力を借りずに、テクノロジーの力を借りてセキュリティトークンを実現させてしまおうというものです。
トークンを発行して資金調達するICOという仕組みは、企業の株式発行の仕組みと非常に似ています。しかしながら、大きな相違点として、ICOでトークンを購入したとしても原則として配当を受けたり、経営に対する発言権を得ることはありません。
従って、ICOで手に入れたトークンを株式同様に扱った場合には、証券法に違反しているという可能性が指摘されることになります。
そのような規制を受けないようにトークンを証券化して証券法に沿ったものにしてしまおうというのがポリマスの目的で、証券法が適用されたトークンがセキュリティトークンと呼ばれ、ポリマスを通じて行われるICOはSTO(Securities Token Offering)と呼ばれます。
ポリマスの提供するプラットフォームでは、トークンを証券化するとともに証券取引所の役割も果たします。トークンを証券化するために必要な要件をトークンに埋め込み、トークンを証券化することを可能とします。
つまり、STOから配布されるトークンが詐欺に利用される可能性は極めて低くなり、投資家は安心して投資することができるようになるわけです。
ポリマスでは、トークンに限らず、将来的には不動産や株、ベンチャー投資などもトークンとして市場での取引を可能にすることが目標です。イーサリアムベースですから、様々な契約をスマートコントラクトによってスムーズに行うことができます。
ブルームバーグは2018年7月17日、SEC(米国証券取引委員会)とFINRA(金融業帰省機構)が米国最大手の仮想通貨取引所コインベース(COINBASE)の3つのライセンス(ブローカーディーラー業・代替取引システム・投資顧問業)を承認したと発表しました。
コインベースは、6月に証券会社キースイートン・キャピタルやヴエノベート・マーケットプレイス社、デジタルウエルス社の買収で3つのライセンスを獲得しており、今回承認されたことでコインベースは従来の金融資産のようなコイン、つまり、セキュリティトークンを取引できる仮想通貨取引所となります。
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この動きは、仮想通貨マーケットに多大な影響を与える可能性があります。
セキュリティトークンと認定されると証券取引所でしか取引できないことになりますが、仮想通貨取引所のコインベースが証券取引のライセンスを取得・承認されたことで、仮想通貨取引所でもセキュリティトークンが取引可能となったからです。
なお、コインベースは三菱東京UFJフィナンシャルグループと連携して、日本市場でも事業展開していく予定です。
エニーペイ(Any Pay)株式会社(本社:東京都港区)のグループ会社であるAny Pay Pte.Ltd.(本社:シンガポール)は、2018年中に収益分散型トークン発行システムをリリースすると発表しました。
Any Pay株式会社では、ICOコンサルティング事業を展開しており、数社のICOサポートを行ってきました。
サポート先の1社であるインドでカーシェアを展開するDrivesy社では、3回にわたりSTO(Security Token Offering)により合計で約1,800万ドルの資金調達に成功しています。
Drivezy社でのサポート経験から、同社ではより企業が簡単にSTOできるサポートシステムが必要であると考え、グループ会社による本サポートシステムの開発に至りました。
・セキュリティトークンは仮想通貨階のセンターステージに立てるか
仮想通貨の新規発行というとICO言われるほどに大人気となりましたが、実際にはICOトークンの多くは詐欺通貨、あるいはプロジェクトが頓挫したりという実情があります。
今後、SEC(米国証券取引委員会)が厳しい規制を課してくる可能性が囁かれる中、STO(Security Token Offering)に期待が集まっています。STOは仮想通貨界のセンターに立つことができるのか注目されるところです。
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・OKExがマルタ証券取引所と連携してセキュリティトークンプラットフォームを開発
世界最大クラスの仮想通貨取引所OKExは、マルタ証券取引所とのパートナーシップにより新しいセキュリティトークン取引プラットフォーム「OKSMX」を構築することを発表しました。
※関連記事:OKExがマルタ証券取引所と提携してセキュリティトークンプラットフォーム開発を発表
・バイナンスCEOがマルタ証券取引所とのセキュリティトークン試験計画をツイート
世界最大クラスで日本人にも大人気のバイナンスは、マルタ証券取引所とともにセキュリティトークンの提供を目指すパイロットプロジェクトが契約されているようです。
中国政府の規制に対しては素早い対応をしてきているバイナンスですが、セキュリティトークンの提供についても、他の仮想通貨取引所に先んじて取り組んでいるようです。
※関連記事:バイナンスCEOがマルタ証券取引所との“セキュリティトークン”試験計画をツイート
・欧州で初めて金融庁に認可された仮想通貨取引所Blocktrade.comがβローンチ
フォーブスによると、リヒテンシュタイン公国を拠点とするBlocjtrade.comは、MiFID II枠組みの規制かとしては最初の仮想通貨取引所サービスの立ち上げを発表しました。
同社は、仮想通貨市場で上位5種類の仮想通貨をサポートしており、年内にはセキュリティトークン等も追加予定となっています。
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20代男性。都内名門高校卒業後、ベンチャー企業を経てコイン東京へ。二次元好きのセミプロゲーマー、好きが嵩じて仮想通貨やDappsゲーム、ブロックチェーン技術の世界にハマる。ゲーム知見と理数的素養から、最新の技術もカバーしつつ、プロジェクトの情報収集や分析を最も得意とする。