SECは2018年の初めに事情聴取の召喚状を多数送り出しました。現在、当局はより多くの企業に召喚状を送付しています。どうやら米国の適格投資家にトークンを独占的に販売したICOが狙われているという。
当局は、これらの企業の多くに対し、投資家との契約を解消するよう圧力をかけている。これに伴い、数十社が投資家に資金を払い戻し、罰金を支払うことに同意した。召喚された新興企業の多くは、SECの要求を満たすのに苦労している様です。15以上の業界筋の情報をもとにDecryptMesiaとYahoo Financeが共同調査の結果を報じました。
問題について議論することを制限されているため、SEC(証券取引委員会)の召喚状を受けた企業の従業員やその弁護士の多くは匿名で情報を提供しています。
2014年に始まったICO資金調達は、昨年、暗号化のスタートアップに資金を提供する手段として人気が高まりました。ICOスタートアップは独自のデジタルトークンを販売します。ICOトークンは通常、スタートアップが作成する予定のエコシステムで後に使用されます。参加投資家は暗号通貨(ビットコインまたはイーサリアム)でトークンを購入します。大半のICO企業はまだプロダクトを立ち上げていません。
過去4年間のICO件数は定かではありません。ICO Alertによると、5,000件以上を記録しているものの、公式には3,400件とみなされています。一方でCoinDeskは、過去2年間で800件を登録しています。現在までに200億ドル以上がICOで調達されています。また、ICOのブームは2018年1月にピークを迎えました。トークン販売の合法性に対する懸念が高まり、9月までに調達額は下落しています。
ICOを行ったすべての企業にとって中心的な問題は、その「トークン」がセキュリティなのか?その場合、同社はSECに登録したか、免除要件に適合しているか?という事です。
ICOを行った企業の多くは、「ユーティリティトークン」や「SAFT」(将来トークン取得略式契約スキーム)を主張して責を逃れようとしますが、SECはそうしたラベルを気にしません。結局ケースバイケースで各ICOの多寡を測ります。
2017年7月にSECは、2016年に1億5,000万ドル以上を調達したICO「The DAO」が提供するトークンを、証券とみなしました。翌年2月の上院議会で、SECのジェイ・クレイトン委員長は、「あらゆるICOは証券だと考えている」と述べました。
Capital raising through blockchain requires compliance with federal securities laws https://t.co/IjOxjoVdfK
— SEC Enforcement (@SEC_Enforcement) 2017年7月25日
「ブロックチェーンを通じた資金調達は、連邦証券法の遵守が必要です。」
SECの企業金融局のウィリアム・ヒンマン局長は、6月に、イーサリアムがセキュリティには見えないと述べたが、ほとんどのICOがセキュリティ取引であると示唆しました。そして「イニシャル・コイン・オファリング、すなわちICOまたはトークンの販売は、米国証券法の範囲外にならない。」と述べました。
セキュリティを提供している米国の企業は、SECに登録するか、免除の対象となる必要があります。しかしICOブームの中で、事実上どこもセキュリティー・オファリングを登録していません。そのため、免除要件を満たさなければならない。
SECの免除要件には、米国外の投資家にのみ販売するか、過去2年間に20万ドル以上の収益を上げた個人、または純資産100万ドル以上の適格投資家にのみ販売することが含まれます。
適格投資家の判断には、SECの「Rule 506 of Regulation D」に基づき「W-2、税務申告書、銀行仲介手続書、信用調査報告書」等の書類をレビューする必要がある。これらのプロセスを経ていたICO企業は、現在、SECから遠い場所にあります。
ICOをSAFTで実施した企業も問題を抱えています。SAFTは、特に証券法をより遵守することを意図していました。しかし、そうは見ない専門家もいます。
SAFTモデルの合法性を疑問視する論文を共著したCardozo Law SchoolのAaron Wright教授は、以下のように述べています;
「投機的な人々を避けて、実際に使用したいと思う人々にデジタル製品の販売を制限するなど、他の方法を構築できた可能性がある。プロジェクトは先にSECに話ができたはずだ。法律はかなり分かりやすい。なぜなら、投資家に何かを売るならば、それはセキュリティーとみなされるからだ。投資家は単にトークンの販売を行ったとか、そのような言い訳は無視される。」
SECが差し押さえ、あるいは資金の払い戻しを命じたICOには、以下の企業があります;
・2017年12月Munchee(約17億円)、トークの価値が上がると宣伝したため
・2018年1月AriseBank(約660億円)、FDIC被保険銀行を買収したと偽って宣伝した
・4月Centra(約35億円)、セレブを利用した誤解を招くマーケティングのため
・9月TokenLot、Crypto Asset Management (CAM)、不当なマーケティングのため
・その他FCFL(約6億円)、TomaHwak等
これらは、SECが公表したいくつかの例に過ぎません。より多くの調査が進行中です。SECは、召喚状を送って質問するだけで、数十のICOを停止して払い戻させました。
We received a second subpeona from the SEC, again collecting information from us as investors in a U.S. company. The legal costs of dealing with these are not insignificant. We will not invest in any further U.S. deals until the SEC clarifies token rules. Pivot to Asia.
— Michael Arrington (@arrington) 2018年9月28日
「SECから2つめの召喚状を受け取り、再度米国企業の投資家として、情報を収集されました。これらに対処する上での法的費用は馬鹿にならない。SECがトークン規制を明確にするまで、米国の案件にこれ以上投資しない事にする。アジアへシフトだ。」(投資ファンドCEO)
SECがICOを行った企業にリーチする時、通常、企業の法律事務所に対して、ICOに関連する膨大な書類を要求します。Yahoo FinanceとDecryptは、多くのICOを代表する法律事務所CooleyがSECの召喚状を受けて、あるクライアントへ送る以下のようなメールを入手した;
「SECは、(クライアントA)を米国連邦証券法に基づく証券と見なすべきか調査しています。検討している可能性が高いと警告しています...この訴訟ホールドの目的上、文書は非常に広く定義されています。」(*関連した全ての資料・情報をそのままの状態で安全に保存すべき)
こうしたプロセスは、多くの企業にとって抵抗の術はなく、ICOの払い戻しに帰結しています。召喚された企業の情報源は、「私たちが唯一望む事は、私たちの名前をプレスリリースに載せない事だけ」と述べています。
FCFLは昨年ICOで520万ドルを調達しましたが、今年8月、投資家に資金を返還しました。払い戻しにも問題があります。ICOが投資家から適切な情報を集めており、まだトークンを発行していない場合、その返金は比較的簡単です。しかし、トークンを発行した後の場合、払い戻しは困難になります。
暗号分析企業Chainalysis社CEOのJony Levin氏は以下のように述べています;
「実際には複雑です。多くの場合、人々は米国のKrakenのような取引所のアカウントでICOトークンを購入しました。そこで得たアドレスにトークンを戻すことはできません。なぜならそれは取引所のアドレスだからです。ICOが払い戻しを迫られた場合、それはMt. Gox(マウントゴックス)を踏襲します。ICOは事情を公表して、投資家は参加した事を証明しなければなりません。」
SECを回避する手段として、一部のICOはユーティリティトークンをセキュリティトークンに変換しようとしています。ICOで1000万ドル以上を調達したIconomiがその一例です。今月、ブログ記事でIconomiはトークン所有者に、「ICNトークンは、株式会社のトークン化された株式(eICN)トークンと交換できる事になる」と伝えました。この新たな構造は、すべての利害関係者に法的な明快さをもたらします。
プラットフォーム「CoinList」に上場している5つのICO「Filecoin、Blockstack、Props、Origin、TrustToken」は、すべて適格投資家にのみ販売されています。Blockstackに詳しい情報筋によると、同社はトークンをユーティリティーと見なしているが、慎重にそれをセキュリティのように扱い、すべての関連する証券法に従うことにしました。
SECの行動はICOにとってバッドニュースに見えるかもしれない。しかし、業界の多くはより楽観的です。規制の明確さが成長をもたらすと見ています。ますます多くのトークンセールを検討している企業は、現在は積極的にSECにコンタクトしています。
ICOに詳しい著名な技術会社のCEOは以下のように述べています;
「公平な企業はこの状況を生き残れると思います。2〜3年後に規制の明確さを得られた頃、今の時期をスピード減速帯として振り返るでしょう。とはいえ、今SECの召喚状を受取っている企業は、現在は減速帯どころか、大規模な峡谷のように感じられるかもしれない。」
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20代男性。都内名門高校卒業後、ベンチャー企業を経てコイン東京へ。二次元好きのセミプロゲーマー、好きが嵩じて仮想通貨やDappsゲーム、ブロックチェーン技術の世界にハマる。ゲーム知見と理数的素養から、最新の技術もカバーしつつ、プロジェクトの情報収集や分析を最も得意とする。