仮想通貨相場で損失が発生しているケースとしては、いくつかのパターンがあります。ケースごとにどのような問題解決方法があるのか見ていきましょう。
・損が出ているがどうしたらよいか分からないケース
・すでに損失が確定しているケース
・含み損を抱えておりどうしたらよいか考えている、法人 ハッキングなど特殊なケース
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ここでは仮想通貨取引での損失確定のタイミングについて詳しく解説していきます。
現在のような低迷相場が続いていると、いったん現金化して、さらに安いところで買ってみたり、あるいは堅調な相場が続く株式投資に切り替えてみようと考える人も多いでしょう。
この場合には、仮想通貨を現金化して取引所から出金手続きをとることになりますが、このケースでの損失確定のタイミングとは、法定通貨である円に切り替える時となり、仮想通貨を売却したタイミングが損失確定(利益確定)となります。
例えば、100万円で購入したビットコイン(BTC)を75万円の相場で売却した場合には25万円の損失確定となります。
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ビットコインなどの決済系の仮想通貨は、買い物などでの決済にも利用することができますが、このケースでは決済するタイミングが損失確定(利益確定)となります。
仮想通貨ホルダーには投資経験のない人も多いと思われますが、決済で利用する場合には売却したという意識がないために注意が必要です。
例えば、ビットコイン決済が可能なビックカメラで、4Kテレビを10万円で購入した際に支払いをBTC決済したケースでは、このときに使用したビットコインが昨年12月の高騰時に20万円で購入したものであれば、差し引き10万円の損失確定となります。
4Kテレビが値下がりしているのでちょうどよいという考え方もあるかもしれませんね!
ちなみに、このケースで今年の安くなって時点の7万円で購入したビットコインで10万円の決済を行ったのであれば、3万円の利益確定となり雑所得となります。
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株式投資では非常に多いケースとなりますが、動きの悪い銘柄から短期的に上昇を見込めそうな銘柄にトレードするというのは、投資の世界では日常茶飯事で行われています。
例えば、2018年11月の時点であれば、動きの悪いビットコインからビットコインキャッシュ(BCH)やリップル(XRP)に乗り換えたいという人は多いでしょう。
100万円で購入したビットコイン1枚を70万円で売却して、ビットコインキャッシュを5万円以下のところで14枚購入したというケースでは、ビットコインを売却した時点で30万円の損失確定となります。
ちなみに、その後に運よくビットコインキャッシュが上昇して7万円で短期トレードによる利確させた場合には28万円以上の利益が発生し、この28万円については雑所得となります。
後述しますが、雑所得は原則として他の所得との損益通算はできませんが、仮想通貨同士での内部通算はできますので、この間のトレードで考えると、最初のトレードで30万円の損失、ビットコインキャッシュで28万円利益ということで差し引き2万円の雑所得となります。
実際には、2018年にはこのケースが非常に多いと思われますので、仮想通貨の乗り換え(買い替え)のタイミングには損失確定(利益確定)となり、損失確定のケースでは、他の仮想通貨のトレードで利益が出ている場合には内部通算できるということを覚えておきましょう。
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ここからは仮想通貨取引の税金計算について詳しく解説していきます。
仮想通貨の税金の計算方法は以下のように、利確した年間の仮想通貨の利益に対して所定の税率をかけて税額を求めます。
・年間の仮想通貨の利益×税率(所得税率+住民税率)=仮想通貨の利益に対する税金
年間の仮想通貨の利益とは次のようにして算出します。
・年間の仮想通貨の利益=年間の仮想通貨の売却金額(仮想通貨同士の交換も含む)-売却した仮想通貨の取得価格-年間の必要経費
つまり、年間の~とあるように、現時点(2018年11月)では仮想通貨により損失確定した場合でも、株式や国内FXのように損失の翌年移行への繰り越しはできません。つまり、今年の分のみ損益通算(内部通算)が可能となります。
また、2018年の仮想通貨トレードでは損失確定したという人が多いでしょうから、仮に他の仮想通貨のトレードで利益が出ている場合には、損益通算で差し引きできますが、株式やFX、先物取引など他の投資の利益とは損益通算することはできません。
ここは、同じ雑所得でも、株式や国内FXなどは分離課税(他の所得と切り離される)であるのに対して、仮想通貨での損益には総合課税(他の所得と合算される)が適用されているからです。
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所得税法上、生活用資産などが盗難に遭った場合には所得金額から一定額を差し引いて税金を計算することが可能で、この考え方を雑損控除といいます。仮想通貨は支払い手段の一つであり、法定通貨(日本円など)との交換も可能なため雑損控除の対象となります。
対象となる損害の原因としては、震災・風水害・落雷のような自然災害や、火災・火薬による爆発など自己の意思によらない不可抗力によって受けた災害、盗難または横領による損失となります。
ただし、詐欺や脅迫による損失は対象となりませんので注意が必要です。
仮想通貨のケースでは、例えば、本年1月のコインチェックのNEM流出事件などのハッキングによる損失の場合には、盗難および横領の線が疑われますので、雑損控除の対象になる可能性が高いと考えられます。
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雑損控除の計算方法は、以下の算出方法で計算された金額のうち、いずれか多いほうの金額となります。
・差し引き損失額-総所得金額等×10%
・差し引き損失額のうち、災害関連支出の金額-5万円
なお、差し引き損失額とは以下のような計算で算出します。
差し引き損失額=損害金額+災害等に関連したやむを得ない支出金額-保険金等の補填金額
※補填金額については、各取引所によって最低保証額などがあるケースもあります。
ここでは、解説を交えつつ、仮想通貨取引で起こり得るケースを挙げていきたいと思います。
例えば、本年1月4日にリップルを最高値に近いところで利確に成功したものの、その後に押し目買いを入れたところで高値掴みをしてしまい、現時点(11月)含み損を抱えている。
この事例は極端な例かもしれませんが、これに似たようなケースは非常に多いのではないかと思われます。このままの状況で来年を迎えてしまうと、年前半に利確した金額に対して雑所得の税金がかかることになります。
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ここは思案のしどころですが、現在含み損を抱えている仮想通貨が、今後価格上昇しそうだと考えていれば、売却したくはないところでしょう。このケースでは、ロールオーバーという手法が役立つことがあります。
ロールオーバーとは、先物取引ではよく利用される手法ですが、このケースでのロールオーバーとは、含み損を抱える仮想通貨売り買い同時に入れることで、いったん損失確定をして取得価格は安い価格にしておくという方法です。
言うまでもなく、このままですと年前半に利確した金額にそのまま税金が発生しますので、年内にいったん含み損を抱える仮想通貨の損失を確定させることで、損益通算を行い税額を低くするというものです。
例えば、年前半の利確で100万円の利益があった場合、このまま来年を迎えると100万円が課税対象になりますが、仮に含み損失を100万円ほど抱えていれば、ロールオーバーして損失確定させることで、課税対象となる金額はゼロ円となるわけです。
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2018年に限って言えば、相場が相場ですからこのケースが最も多いのかもしれませんが、仮想通貨取引による利益はなく含み損失のみ抱えているというケースです。
このケースでは、仮想通貨の損失は翌年移行への繰り越しが認められていませんので、他の損益通算が可能な雑所得がない限りはそのまま保有することになります。他に損益通算可能な雑所得がないのであれば、税務処理する必要もありません。
ただし、他に課税対象となる損益通算可能な雑所得がある場合には、ロールオーバーを検討したいところです。
ここでいう仮想通貨の損失と損益通算可能な雑所得とは、他の仮想通貨取引による利益以外では、例えば、アフィリエイトでの利益、フリーランスの執筆料などが対象となる可能性があります。(正確には、最寄りの税務署でご確認をお願いします。)
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(1)法人で保有しているケース
2017年に億り人になった人や思わず大金を仮想通貨投資で手に入れた人の中には、法人設立して法人口座で取引している人もいるでしょう。法人の場合には、個人に比べて経費が利用しやすいなどのメリットがあります。
また、個人の確定申告は前年度(1月1日から12月31日)の取引が申告の対象となりますが、法人の場合には設立時期によって決算期が異なります。従って、決算月に合わせて調整します。
法人ですから、個人の場合の雑所得ではなく事業所得となり、損益通算も可能で損失は翌年度に繰り越すことも可能ですし、本年度に他の利益がある場合には決算月をにらみながらロールオーバーという手もあります。
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(2)ハッキングや消失したケース
デジタル通貨である仮想通貨には、コインチェックのNEM流出事件などのハッキングなどによる資金消失という危険性があります。万が一、このようなケースに遭遇してしまった場合の税金はどうなるのでしょう。
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上記の仮想通貨と雑損控除のところでも述べていますように、基本的にはハッキングによる損失は雑損控除の対象となる可能性が高いのですが、現時点では、国税庁からこのような説明がされているわけではなく、専門家等の見解となります。
ただし、もう一つの考え方があり、所得税法では、雑所得に限って言えば所得税法第62条1項で規定する「生活に通常必要でない資産」に該当する場合か、71条1項で規定するいわゆる雑損控除の場合にはそれぞれ特別な規定が適用されます。
が、それ以外であれば、所得税法51条4項に基づいて損失を必要経費として認めます、となっています。
つまり、現行法(2018年11月時点)では、ハッキングなどによる消失の場合には、原則雑損控除が適用される可能性が高いと思われますが、仮に適用されないケースでも雑所得の必要経費として仮想通貨による利益額を上限として損失を計上できることになります。
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(3)ビットコインFXの場合には
仮想通貨にもFXトレードが盛んになりつつあります。仮想通貨FX専門取引所である海外取引所のBitMexが急成長していることから、今後は外国為替FXのように巨大なマーケットとなる可能性は十分あります。
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それでは、現時点でのビットコインFXの税金はどうなっているのでしょう。残念ながら、他のFXや先物取引のような税金制度は適用されておらず、現物の仮想通貨同様の総合課税の雑所得扱いとなっています。
いまだ法整備が整っていない仮想通貨市場ですが、ご承知の通り金融庁の認可を受けている証券会社や国内FX会社には、税制上の特典(メリット)が適用されています。
仮想通貨取引所に関しても、金融庁への届け出が必要となったことから、今後は株式やFXのような税制が検討される可能性は十分にあるといえるでしょう。
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残念ながら、2018年は間に合いませんが、多くの人が損失を出した可能性の高い本年にしっかりと仮想通貨や投資に関する税制をきちんとマスターしておき、実際に大きな利益が出せるようになった時に、慌てず対処できるようにしておきたいものです。
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20代男性。都内名門高校卒業後、ベンチャー企業を経てコイン東京へ。二次元好きのセミプロゲーマー、好きが嵩じて仮想通貨やDappsゲーム、ブロックチェーン技術の世界にハマる。ゲーム知見と理数的素養から、最新の技術もカバーしつつ、プロジェクトの情報収集や分析を最も得意とする。