仮想通貨のハードフォークの意味や、目的、メリットとは何なのか見ていきます。
仮想通貨のハードフォークとは、大まかに言うと仮想通貨のブロックチェーン仕様を変更することを意味します。
ブロックチェーンの仕様変更には、ハードフォークと後述するソフトフォークの2種類があり、ハードフォークとは既存の使用は無視して、互換性のない全く新しい仕様に変更することです。
このため、ハードフォークをすることで既存仕様のコインとは別の、新しい仕様のコインが誕生します。
それでは何ゆえに仮想通貨のハードフォークは行われるのでしょうか?
ハードフォークが行われる目的とは、仮想通貨に何らかの問題がある場合に、その問題を解決するために行なわれます。そのために、結果として、機能性の向上した高品質のコインが誕生することになります。
ハードフォークの実例から、その目的とメリットを見ていきましょう。
2019年3月に、イーサリアムは予定されていたハードフォークを伴うアップデート「コンスタンティノープル」と「セントピーターズバーグ」を無事に完了させています。
当初は2018年に実施される予定のアップデートですが、イーサリアムのスマートコントラクトに問題が見つかったためハードフォークを伴うアップデートとなりました。
今回のアップデートの主な目的としては、PoWからPoSへのコンセンサスメカニズムの変更の準備となっており、結果として、問題となっているスケーラビリティ対策をしていこうというものです。
今回のハードフォークは「ノンコンテンシャス(みんなが合意する)」ものとなっており、分裂により新たなコインが発生することはありませんでした。
もう一つ、イーサリアムといえば、有名のハードフォークがありますが、こちらはハッキング事件が原因で行われました。以下簡単に解説しておきます。
イーサリアムのブロックチェーン上に書かれたThe DAOのスマートコントラクトに致命的なバグがあったことが原因で、2016年7月20日にイーサリアムのハードフォークが行われ、イーサリアムとイーサリアムクラッシックに分裂しました。
The DAOとして有名な事件ですが、イーサリアムのスマートコントラクト上に作られた分散型投資ファンドのICOプロジェクトであったThe DAOは、致命的なバグを攻撃され、当時のレートで8000万ドル(The DAO総資産の3分の1)が盗まれてしまいました。
この対応策として、ハードフォークが実施され、盗まれた時の履歴を消去して8000万ドルの資産を元のところに戻す作業が行われました。ハードフォーク後に新たに出来たブロックチェーンがイーサリアムの正式なブロックチェーンとなり、その結果、旧ブロックチェーンは一部の人の支持もあり、イーサリアムクラッシックという全く別のコインとして残りました。
2018年11月に、ビットコインキャッシュのハードフォークが行われ、ビットコインキャッシュとビットコインキャッシュSVに分裂しました。
これは、ビットコインキャッシュのコミュニティであるBitcoinABCとBitcoinSVによる意見の対立が原因で、つまり、コミュニティ内の内輪もめが原因のハードフォークでした。
結果的には、BitcoinABCがビットコインキャッシュに、BitcoinSVが新たに誕生したビットコインキャッシュSVに採用されることになりました。
内輪もめというと表現が悪いのかもしれませんが、主導権争いに加えて、両陣営がより良いコインにしようとして意見が対立したというところです。
ライトコイン(LTC)は、2019年8月時点で仮想通貨時価総額ランキング4位の堂々たるメジャー通貨ですが、ビットコイン、イーサリアム、リップルと比較すると何となく影が薄い存在となっています。
それのそのはずで、実はライトコインはビットコインのサブアセットとして使用されることを想定して開発されたコインで、まさにアルトコインの代名詞ともいうべきものなのです。
ビットコインのサブアセットとして開発されたライトコインの大きな特徴が、Segwit(セグウィット)を搭載していることです。
Segwitとは、ビットコインの最大の問題点となったスケーラビリティ問題を解決するもので、ブロックサイズを圧縮することでデータ量を少なくするという優れものです。
このSegwitを導入することも仕様変更となりハードフォークとなります。
前述のように、仮想通貨の仕様変更にはハードフォークとソフトフォークの2種類があります、名前からして大きな違いがあるように思われますが、簡単に言うと、ルール変更の適用方法が異なることになります。
ハードフォークのルール変更:ハードフォークの場合には、ある一定の時点以降のブロックに対してルール変更を適用し、その時点以前のブロックチェーンについては旧ルールのままにしておきます。
そのため、新ルールに基づくブロックチェーンだけでなく、旧ルールのブロックチェーンも伸びていく可能性があり、これにより分裂から新たなコインが誕生します。
ソフトフォークのルール変更:これに対して、ソフトフォークのルール変更とは、すべてのブロックに対して行われます。
変更する時点以前のブロックも対象としてルール変更が行われますので、ブロックチェーンが分裂する余地はなく、新たなコインが誕生することもありません。
ハードフォークが行われるのには様々な要因がありますが、投資家にとってどのような影響があるのでしょうか。過去の事例から、価格への影響について見ていきます。
ハードフォークといえば、仮想通貨時価総額のシェア60%以上を占めるビットコインから分裂して、現在(2019年7月末)時価総額ランキング5位のビットコインキャッシュが誕生したハードフォークが最も有名です。
この2017年8月1日に行われたハードフォークは、ビットコインのスケーラビリティ問題からくる送金・決済遅延の解消を目的に行なわれています。
当初、ここまで頻繁に利用されるとは考えていなかったビットコインのブロックの容量は1MBに設定されていましたが、これでは送金時間や手数料に問題が発生することから、8MBのブロックサイズを持つビットコインキャッシュが誕生します。
ビットコインからの分裂については、コミュニティ内での意見の対立等もあり、このハードフォークから、ビットコインと後にメジャー通貨となるビットコインキャッシュという2つのコインが存在することになりました。
チャートは、2017年8月時点のビットコインの日足のチャートです。
青い☆印が8月1日時点ですが、8月1日には日本円で4万円近い急落となっていますが、その後は持ち直して上昇開始し、翌月の9月2日には8月1日安値のほぼ倍近い価格まで急騰しました。
8月1日は、株式でいう配当落ちみたいな感じで下落したものの、すぐに反転上昇しているのが見て取れます。
上記で解説したビットコインキャッシュから分裂したビットコインSVとのハードフォークでは、Bitcoin ABCとBitcoin SV陣営による「ハッシュウォー」が繰り広げられています。
マイニングの処理速度のことをハッシュパワーといいますが、ビットコインキャッシュのアルゴリズムにはPoW(Proof of Work)が採用されており、要は早い者勝ちでマイニング報酬が得られる仕組みとなっています。
マイニング集団から構成されている両陣営の間で、Bitcoin SVがパワープレイでマイニングシェアを上げたことがハッシュウォーの引き金となりました。
結果的にハードフォーク後には、ビットコインキャッシュとビットコインSVという2つのコインに分裂したのは前述の通りです。
ビットコインキャッシュは、2019年5月にも新たなハードフォークを実施しています。
これは、ビットコインキャッシュに採用されたBitcoin ABCによるもので、その内容は、ネットワークのスケーラビリティ向上に主眼が置かれており、目玉となるのはトランザクションの署名方式に「シュノア署名」が実装されることです。
このハードフォークは、Bitcoin ABCによるビットコインキャッシュの機能面や仕様に関するアップデートとなり、分裂による新たなコインは誕生していません。
チャートは、本年5月前後のビットコインキャッシュの日足チャートです。
本年3月までは下落し続けていたビットコインキャッシュですが、4月からのビットコイン上昇相場の流れにも乗り、また、今回のハードフォークも好材料となり、5月から6月にかけても上昇相場となりました。
イーサリアムとイーサリアムクラッシックのハードフォーク前後のイーサリアムの価格も見ておきましょう。
チャートは、2016年7月時点のイーサリアムの日足のチャートです。
現在のように、仮想通貨相場が人気化していない時代のものですが、約1か月前にハッキング事件「The DAO」発覚から急落しています。
もともとはアップデート期待から上昇傾向でしたが、水を差された形となり、ハードフォーク当日には上昇するもののすぐに下落に転じ、その後は安値圏でのレンジ相場となりました。
今後予定されている仮想通貨のハードフォークにはどんなものがあるのでしょうか?
やや拍子抜けの感があったものの第3弾のアップデートであるメトロポリスの「コンスタンティノープル」も完了させ、最後となったアップデートに大きな期待がかかります。
イーサリアムのハードフォークには、4段階のアップデートが予定されており、すでに第3段階までのアップデートは完了しており、最後のセレニティを残すのみとなっています。
第1段階:フロンティア(バグ修正)
第2段階:ホームステッド(マイニング難易度調整)
第3段階:メトロポリス(PoS移行準備)
第4段階:セレニティ(PoS完全移行)
―延期がありながらも残すはセレニティのみ
第3弾のアップデートがやや拍子抜けであったというのは、結局は最後のセレニティへの準備段階という位置づけであったからです。
セレニティでは、PoWからPoSへの移行が完全に完了することになり、これによりマイニングの電力消費量が減少するほか、より分散的にマイニングを行うことができるようになります。
イーサリアムのブロックチェーンのアップデートであるハードフォークでは、過去3回いずれも価格は期待感から上昇していますが、最後のセレニティの場合には、期待の度合いは過去のものとは比較にならないほど大きなものであり、その時の相場にもよりますが大きな期待がかかると思われます。
イーサリアムクラッシック(ETC)のハードフォーク「アトランティス」、2019年9月17日に実施されます。
ミンブルウィンブル(※)を実装する匿名性の仮想通貨ビーム(BEAM)は、最初のハードフォークを本年8月15日に予定していると発表しました。
今回予定されているハードフォークでは、取引手数料の引き下げ、スピード、セキュリティ、ユーザーエクスペリエンスの向上を意図しています。
※ミンブルウィンブルとは、元々はハリーポッターの呪文ですが、匿名性を高めるテクノロジーとして知られており、スケーラビリティと匿名性の問題を解決します。
ハードフォークが実施される際に、ホルダー(投資家)として注意すべきポイントは3つあります。
ハードフォーク前後には、トランザクション時のエラーやトークンの紛失を防ぐために、ほとんどの取引所が当該通貨の取引を停止します。
取引だけではなく、入出金も停止しますので注意しましょう。また、ハードフォーク時にトランザクション処理を行うと通貨が消失する可能性があります。
ハードフォークによる分裂から新たなコインが誕生する際に、新コインが付与されるかどうかは、保管している取引所やウォレット次第となります。
つまり、取引所やウォレットによっては、付与されるところと付与されないところがあることになります。事前に、付与対応をする取引所やウォレットにトークンを預けなければなりません。
ハードフォーク直前には、様々な要因から相場が乱高下することがあります。一時的な相場の下落やアップデートによるバグなどを懸念して資金をステーブルコインなどに退避する動きもあり、価格が下がることが多いので注意しましょう。
ハードフォークとは、仮想通貨のブロックチェーン上にある特定のブロック以降を仕様変更するという方法です。
このハードフォークの大きな特徴として、分裂から新たなコインが誕生することがあります。ビットコインからは、ビットコインキャッシュはじめ複数の新たなコインが分裂により誕生しています。
今では、ハードフォークというと、自動的に新たなコインがもらえるということから、仮想通貨の魅力的な買い材料の一つとなっています。
20代男性。都内名門高校卒業後、ベンチャー企業を経てコイン東京へ。二次元好きのセミプロゲーマー、好きが嵩じて仮想通貨やDappsゲーム、ブロックチェーン技術の世界にハマる。ゲーム知見と理数的素養から、最新の技術もカバーしつつ、プロジェクトの情報収集や分析を最も得意とする。
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