FX取引とは、証拠金取引のことであり、少額の証拠金にレバレッジをかけて大きな収益を狙おうという取引手法です。
少額の証拠金で大きな利益を狙うということは、当然、レバレッジをかけるという行為でリスクを覚悟して取引することになりますが、その場合のリスクの程度をある程度知らせてくれるというツールがあり、これが証拠金維持率です。
証拠金維持率をマスターすることは、投資手法やテク二カル分析をマスターするのと同様に非常に重要です。証拠金維持率を理解することで、ハイリスクと言われるFXも安心してトレードできるようになります。
証拠金維持率とは、現在保有しているポジションと口座残高(証拠金)の比率のことで、これを知ることで、レバレッジをかけるというリスクテイクに対して、相場から退場させられる危険度を数字で知ることができます。
FXでは、少額の証拠金に対して何倍ものポジションを持てますので、その瞬間のリスク度合いがどれほどなのかは、特に含み損が発生しているケースでは常に見ておく必要があります。
証拠金取引は、英語では「Margin maintenance rate」となりますが、証拠金が「Margin」、維持が「maintenance」、率が「rate」となります。つまり、証拠金を維持していけるパーセンテージと考えるとわかりやすいですね。
FX・レバレッジ取引とは、証拠金取引と言われるように、少額の証拠金を預けて、その数倍から数十倍(海外では数百倍以上が当たり前)という額の取引を行う取引方法で、相場の変動次第では、大きな利益を上げられますが、一瞬にして証拠金が飛んでしまうことも珍しくありません。
例えば、10万円の証拠金にレバレッジを10倍とした場合、レバレッジいっぱいで100万円までの取引が可能となります。ちなみに、この時の証拠金維持率は100%です。
ビットコインが100万円だとすると、10万円で1BTCの取引ができるわけで、価格が110万円になったら10万円の利益をとなり、90万円に下落したら、その瞬間に証拠金は消えてしまいます。(実際には、その前にロスカットで強制決済されます)
また、レバレッジは、海外FXなどでは500倍前後というのが標準となっていますが、日本では、金融庁によるレバレッジ規制が存在し、個人投資家の場合には25倍までとなっています。これにより、国内仮想通貨取引所のFXも25倍以下の数字が設定されるはずです。
証拠金維持率は大変重要な数字ですので、MT4 や各取引所のFXトレード画面には表示されるようになっています。数字を見るだけならば、ここを見ていれば問題はありません。
ただし、計算式は簡単ですので、覚えておくことで相場の変動によって、証拠金維持率がどの水準で何%になるということを理解しておくことはトレードを管理するうえで重要となります。
証拠金維持率自体の計算式は非常に単純なものですから、エクセルや計算機でも簡単に出せます。計算は簡単なのですが、使われる語句は初めて聞くようなものばかりですので、重要なものを説明しておきます。
受入証拠金:現在の口座残高の合計
必要証拠金:現在保有中のポジションの証拠金の合計金額
有効証拠金:純資産(受入証拠金から、評価損益+未実現確定損益+入出金予定額を±したもの)から、保有するポジションの証拠金を引いたもので、新規の取引できる余力の金額のこと
そもそも証拠金とは、FX(証拠金取引)などの差金決済取引(※)などを行う際に担保として取引所に預ける金銭のことです。FXは証拠金取引なので証拠金と呼びますが、株式信用取引や先物取引では保証金といいます。
つまり、この証拠金のうち現在口座にある残高が受入証拠金、ポジション保有のために受入証拠金から拘束されている証拠金が必要証拠金、新たなポジションを建てる余力が有効証拠金となります。
※差金決済取引
差金決済取引とは、株式やドル円、あるいはビットコイン等の現物の受け渡しはせずに、売買の差額を計算し決済する取引のことです。
証拠金維持率の計算式は以下のようになります。
証拠金維持率=有効証拠金÷必要証拠金×100
実際に、ビットコインFXの場合で証拠金維持率の計算をしてみます。
ロングポジション(買いポジ) 0.01BTCFX(ビットコインFX)
購入価格 1,100,000円
現在価格 1,090,000円
レバレッジ 15倍
預入証拠金 10,000円
上記事例で計算します。証拠金は1万円、レバレッジ15倍、0.01BTCを購入した場合です。一般的に、FXトレードをやっている方からすると、この例は非常に緩いケースとなりますが、初心者の方はこのくらいから始めるほうがおすすめです。
証拠金維持率とは「有効証拠金÷必要証拠金」ですから、まずは、必要証拠金と有効証拠金を求めます。
必要証拠金は、現在のポジションに購入金額をかけてレバレッジで割った数値となります。
必要証拠金=0.01BTC×1,100,000円÷15
=11,000円÷15
=773円
有効証拠金は、購入価格よりも10,000円下落した状態で出しますので、10,000円×0.01BTC=100円となり、評価損益は100円で有効証拠金は9,900円円となります。
従って
9,900円÷773円=1,281%(以下切り捨て)となり、1,281%の証拠金維持率となります。
ちなみに、購入した時点の証拠金維持率は、マイナス分がありませんので、10,000円を773円で割った1,294%となります。
では、ビットコインが急落して購入価格から100,000円値下がりした場合はどうでしょう。有効証拠金は9,000円となり、証拠金維持率は1,164%になります。
証拠金10,000円でレバレッジ15倍ということは150,000万円までの取引が可能となりますが、レバレッジいっぱいまで購入せずに、11,000円という実質的にはレバレッジ1.1倍で取引すると、このような余裕のある取引ができます。
では、もっと儲けたいと思って0.1BTCで勝負するとどうなるでしょう。
必要証拠金=0.1BTC×1,100,000円÷15=7,333円
この時点での証拠金維持率は、10,000円÷7,333円×100=136%となります。
上記の10,000円下落した場合には、10,000円×0.1BTC=1000円が評価損益となります。
従って、証拠金維持率=9,000円÷7,333円×100=123%(切り捨て)となります。
ロスカットの設定基準次第では、すでに危険ポイントに入っていることになります。
上記の事例で、レバレッジ1倍とレバレッジ10倍での証拠金維持率を見てみましたが、同じ証拠金でもレバレッジ次第ではリスクテイクの重さが全く異なります。
レバレッジ1倍なんて意味ないじゃん!と思われる方も多いかもしれませんが、FX(為替)では高金利国(例えばトルコリラ)の通貨ペアで金利差狙い(スワップ狙い)でレバレッジ1~2倍で取引する人は実は非常に多くいます。
多少値下がりしても金利差で十分賄えるという考え方で、価格も上昇するようなら2度美味しいというトレード法です。
仮想通貨の場合には、スワップという考え方はありませんが、ビットコインのようにボラティリティが高いという特徴があり、これはFX取引にとっては非常に好都合なものとなります。
さて、FXと相性の良いと考えられる仮想通貨ですが、レバレッジをかける以上はリスクテイクする必要があります。そのリスクを危険域や安全圏の目安を知っておくとFX取引には非常に役に立ちます。
FX取引における、短期取引(スキャルピングやデイトレード)もしくは長期取引での、レバレッジ倍率での目安を見ていきましょう。
FX取引では、多くの方はリスク回避の意味からも短期取引を好む傾向があります。とは言うものの、3月には余裕で40万円台前半で購入できたビットコインは3か月後の6月には150万円弱まで跳ね上がっており、ビットコインの場合には長期投資も魅力的です。
ここでは、短期取引と長期取引の両方のケースでの、証拠金維持率の安全圏となる目安のパーセンテージや、その場合の理想的なレバレッジ倍率での目安を見ていきます。
1.短期取引の場合
スキャルピングやデイトレードなどの短期取引の場合には、安全圏となる証拠金維持率の目安は300%以上と言われています。レバレッジ倍率の目安としては10倍くらいとなります。
数十秒から数時間、長くても翌日にポジションを持ち越すことのない短期取引では、そもそも長時間持たないというリスクヘッジ機能を取り入れた手法ですので、長期取引に比べたらそれほど証拠金維持率を気にする必要はありません。
当日中に短時間で決済し、ストップロスも設定しておけば、まず相場のクラッシュや大きな変動に影響されることはないからです。
2.長期取引
ポジショントレードのような長期取引の場合には、安全圏である証拠金維持率の目安は1,000%以上と言われています。レバレッジ倍率の目安は2倍くらいです。
これは、前述のスワップトレードのレバレッジと合致します。仮想通貨にはスワップトレードという考え方はありませんが、その分大きなボラティリティがありますので、長期取引にも魅力があります。
長いスパンでポジションを持ち続ける長期取引の場合には、その分だけ相場のクラッシュや大きな変動に遭遇する可能性が高くなります。
また、予想とは反対方向にトレンドが発生した場合にも、レバレッジを高くしているとロスカットされる危険性がありますので、レバレッジは低く設定することが大切です。
最もおすすめできないのは、高いレバレッジでの長期取引で、一獲千金という名のもとに、多くの投資家がこの高いレバレッジによる長期取引に挑みましたが、ほとんどの方が市場から退場しているのが実情ですし、少なくともこのやり方で勝ち続けている人は存在しません。
仮に、高いレバレッジの長期取引で大きく取れるという広告があれば、それはスキャムだと考えて間違いないでしょう。
上の画像は、海外FX仮想通貨取引所CRYPTOGTの証拠金計算ツールですが、FX(為替)ほどではないまでも、仮想通貨FXの証拠金計算シミュレーターも提供されるようになっています。
百聞は一見に如かずといいますが、FX取引の経験者であればロスカットされた経験のない人は皆無といってもよいくらいに、FXとロスカットは切っても切れない関係にあります。
このロスカットを避けるためのツールとして、証拠金維持率を有効活用する必要があるわけですが、このロスカットは各取引所によってその比率が異なります。
ロスカットの説明をする前に、まず、毎日大量のロスカットが行われているというのが事実があることを知っておきましょう。いかに多くの方が適正な証拠金維持率を守っていなかったかということの表れでもあります。
それでは、なぜロスカットは行われるのかというと、現状以上の損失の拡大を防ぐためです。そもそもロスカットの可能性があるという時点で、トレードとしては失敗トレードの可能性が高く、損失は拡大していくと思われます。
損失の拡大を防ぐために、各取引所が設定した証拠金維持率を下回った場合には、強制的に決済を実行し、それ以上の損失が出ることを防ぎます。
特に、急落時には多くの投げ売りが出ますので、大きな損失が発生し、場合によっては証拠金以上の損失が出ることも珍しくはありません。そのようなことにならないように、ロスカットが設定されているのです。
FXを提供する各取引所では、顧客保護の観点から、各取引所が設定した証拠金維持率を下回ると、強制ロスカットの水準が近づいていまよという警告の「マージンコール」をユーザーあてに連絡します。
マージンコールが発生した場合の対処法は2つです。取引所の指定した期限までに追証(追加証拠金)を入れて証拠金維持率を元の水準に戻す方法と、損切りなどを行いポジションを縮小することによって証拠金維持率を元の水準に戻すという方法です。
明らかに予想と反対方向にトレンドが発生していると思われる場合には、追証を入れてもさらに2度、3度と追証を入れる羽目になることも多く、よほどの余力がある場合を除けば、失敗取引と割り切って損切りするほうが得策であるケースがほとんどです。
テクニカル分析に秀でているのになかなかFXで勝てないという人も少なくないのですが、多くの場合にはこの資金管理ができていないのがその理由です。
FXの成功者が一様に述べている言葉に、「取引を続けられることや、相場から退場させられないことが重要である」というものがありますが、これはまさに資金管理の重要性を指摘しています。
強制ロスカットされることは、すなわち、市場から退場させられることに等しく、トレーダーが最も注意しなければならないポイントでもあります。
エントリーの際には、レバレッジ含めて慎重にトレードプランを立てて、間違ってもロスカットされるようなことがないようにすることが重要です。トレード前には、適正なレバレッジであるか、証拠金維持率はどうなるのかを理解し、また、損切り設定も忘れないようにします。
前述のように、証拠金維持率は各取引所によって異なります。FXを提供する国内取引所4社を比較してみます。
GMOコインでは、円建てでビットコイン、イーサリアム、リップル、ビットコインキャッシュ、ライトコインのFX取引が提供されています。レバレッジは最大4倍です。
ロスカット:証拠金維持率が75%を下回った場合
マージンコール:証拠金維持率が100%を下回った場合
DMMビットコインでは、円建てでビットコイン、イーサリアム、リップル、ビットコインキャッシュ、ネム、ライトコイン、イーサリアムクラッシックのFX取引が提供されています。レバレッジは最大4倍です。
ロスカット:証拠金維持率が80%を下回った場合
マージンコール:証拠金維持率が100%を下回った場合
コインチェックでは、円建てでビットコインのFX取引を提供しています。レバレッジは5倍でしたが、2019年10月31日14時以降から4倍に変更になります。尚、変更に伴い、執筆時点(9月11日)新規注文は停止されています。
ロスカット:証拠金維持率が50%を下回った場合
マージンコール:証拠金維持率が100%を下回った場合
bitFlyerでは、LightningFXでビットコインのFX取引が提供されています。レバレッジは最大4倍です。
ロスカット:証拠金維持率50%を下回った場合
マージンコール:証拠金維持率100%を下回った場合
仮想通貨、とりわけボラティリティの高いビットコインは、FX取引との相性が非常に良いといわれています。ドル円などの外国為替もFXから個人投資家に一気に広がることになりましたが、仮想通貨もガチホだけではなく、トレーディング対象として広がる可能性が十分にあります。
FX取引では、テクニカル分析や売買手法と同様に、証拠金維持率の計算も重要なポイントとなります。FXを始める前にしっかりとマスターしておきましょう。
40代男性。大手証券会社、大手通信会社の経営管理を経てセミリタイヤ。職務経験から、広く事業や経済動向、株式・先物・為替市場に精通。長らく株式トレードを行い、暗号通貨は2017年から。仮想通貨だけでなく、ビジネスや世界マーケットを絡めた視点から大人の分析ができるビジネスマン。