ビジネスの世界では、「機会損失」という言葉がよく使われていますが、「生き馬の目を抜く」ともいわれる投資の世界(特にFX)でも重要な考え方となります。
今回は、「機会損失」について徹底的に考察していきます。
機会損失とは、最善の意思決定をしないことで利益を売る機会を失い、それにより生じた損失のことを言います。
ビジネスの世界では、在庫切れで商品の販売ができなかった場合、商品を販売しなかったことで、本来得るはずの利益が得られなかったことになります。
投資やFXの世界では、取引所のサーバーが落ちた、あるいはネット環境が悪くなり取引画面が利用できなくなったなど、何らかの理由でいつものトレードができなかったことから、本来得られたはずのエントリーチャンスを逃してしまった場合のことをいいます。
機会損失は、英語で「opportunity cost」といいます。「opportunity」とは機会のことで、「cost」は価格となります。ビジネスプランニングにおいて活用されている言葉で、「opportunity loss」も使われます。
「機会損失が大きい」、あるいは「機会損失を防ぐ」などという使われ方をしますが、トレーディングではある意味では「機会損失」を防ぐことは、利益を積み重ねていくためには非常に重要なポイントとなります。
機会損失の具体的な事例について見ていきましょう。
仮想通貨における機会損失とは、最善の意思決定をしないことで、本来エントリーして利益をあげられるチャンスがあったのに、その機会を失ったことになります。どのようなケースがあるでしょう。
最も多いケースとしては、仮想通貨取引所のメンテナンスにより、トレードができないというケースがあります。通常、証券会社やFXのメンテナンスは休日中や夜間に実施されますが、24時間365日オープンしている仮想通貨取引所では、取引時間中でのメンテナンスとなります。
メンテナンス時間は、前もって連絡されますが、1つの取引所にしかアカウントを持っていない場合には、メンテナンス時間帯に相場が動いた場合には、取引で儲けられる可能性があったのに、みすみす機会を逃してしまうことになります。
取引所関連では、サーバーがダウンして取引できない可能性も考慮しておく必要があります。また、後述しますが、コインチェック事件のように、取引所自体がハッキングされた場合にも機会損失は避けられない問題となります。
仮想通貨取引における機会損失には、利確のタイミングを逸することによるものもあります。例えば、夜間に短期トレードしていたところ、ついつい睡魔に負けて眠ってしまい、本来なら利確していたものが、目が覚めたら含み損になっていたというケースです。
同様に、短期トレードのつもりでエントリーしたものの、急用ができて少しの間トレードから離れたところ、利確し損ねて大きな含み損がでたというケースも、経験したことのある人は多いのではないでしょうか。
もちろん、利確のタイミングを逃す理由には、単に実力不足からくることもあり、もっと上に行くと思って利確しなかったというのは、機会損失ではなく単なる実力不足ですから混同しないようにしなければなりません。
また、トレードスタイルによって、機会損失の考え方が異なります。
スキャルピングの場合には、何度もエントリーチャンスがやってきますし、そもそも大きな値幅を狙いませんので、多少のエントリーチャンスを失ったところで、気にせずに次のチャンスにかけるのが得策です。
狙っている値幅次第ですが、デイトレードの場合には、基本的にはスキャルピングと同様の考え方になると思われます。
これに対して、比較的大きな値幅を狙うスイングトレードの場合には、機会の損失は死活問題といっても良いでしょう。スイングトレードの場合には、IFO注文(IFO注文+OCO注文)を入れることで、機会損失を防ぐことができます。
ビジネスにおける機会損失の実例を見ていきます。ビジネスでは、一度の取引(1回のトレード)というよりも、最大の利益を得る決定をしなかったために得られなかった損失というイメージがより強くなります。
最近、Yuotubeの大物インフルエンサーがやってきたにもかかわらず、カード決済できないために機会損失するというTVCMがありますが、まさにあれのことです。
クレジットカードや電子マネー、或いはスマホ決済、仮想通貨決済などに対応していなかったために、キャッシュレスでの決済を望む顧客の対応ができずに、売り上げをあげるチャンスを逸してしまうことです。
在庫がなくなったために売ることができなかったという状況も機会損失です。「売り切れ」とは在庫分を売り切ってしまった状況のことで、「在庫切れ」とは商品の在庫がない状態のことです。
売ることができる機会がありながら、在庫がなくなったために商品を売ることができず、得られるはずの利益が得られなかったというケースとなります。
コンビニの在庫管理はPOSシステムと連動しており、機会損失を少なくするような工夫が凝らしてありことは有名です。
価格設定のミスにより、機会損失が発生することもよくあります。大手スーパーなどでは、競合他社の価格調査を行い適切な価格設定を行っていますが、調査不足により、価格を高く設定してしまったために、本来得られるべき利益を逃してしまうケースです。
よく地域一番店舗を目指している店舗の場合には、徹底的に価格調査を実施しており、競合他社より1円でも高い場合には、値引き対応します。と宣言しているところもありますが、これは機会損失対策といえるでしょう。
仮想通貨取引の場合、取引所がハッキングに遭って資金が流出したり、或いは経営破綻からGoxしたりした場合には、トレーダー(投資家)にとっては、非常に大きな機会損失を受けることになります。
2018年1月、国内取引所のコインチェックで約580億円ものNEM流出事件が発生しましたが、その後長期間にわたり、コインチェックでの取引はもちろん、資金の出金もできない状況となりますが、これは紛れもない機会損失となります。
結論から言うと、すでにご存知のように、コインチェックには流出した資金すべてを賠償しうる十分な資金量を有していたということにも驚くことになりますが、事件発生直後には情報が錯綜し、多くのコインチェックユーザーが心を痛めていました。
2018年2月15日には、「コインチェック被害対策弁護団」が第1次訴訟を東京地裁に提訴しています。弁護団によると、「下落時に損切できず、値上がり時も利益を得られないという機会損失への補償を求めたい」という相談も多いとのことでした。
ただし、機会損失については、機会損失とは目に見えるものではなく、一般的には機会を損失したという事実を証明するのが難しいといわれています。
注目度大:☆☆☆
— 仮想通貨研究所@XRP/BTC (@Bitcoin23395542) 2019年4月3日
▼「仮想通貨そのものを返せ」コインチェック集団訴訟、第1次提訴…弁護団「戦後最大規模の消費者事件」 - …https://t.co/KMMSclAnX6
「機会損失」とにているビジネス用語に「逸失利益」というものがあります。似ているようで実は根本的に違う2つの用語を簡単に解説します。
逸失利益とは、事故や不正行為がなければ得られていた利益のことで、「機会損失」とは、本来ならば得られていたはずの利益の機会を逃すことを言います。
つまり、逸失利益とは受け身の状態であり、事故や競合先などの不正行為は自分ではなかなかコントロールすることができるものではありません。これに対して、機会損失は対策次第では自分で何とか抑えられるものです。
逸失利益とは、本来得られるはずのものであるにもかかわらず、債務不履行や不正行為等により得られなくなった利益のことを指します。
例えば、交通事故で一家の大黒柱であった父親が亡くなったとします。残された家族は深い悲しみとともに、今後の生活が大変苦しくなる可能性があります。
逸失利益とは、この父親が普通に働いていた場合に今後稼いでいたであろうお金のことを指します。交通事故に遭うことなく、元気ならば家族のために稼いでいたであろう利益がなくなることを逸失利益といいます。
機会損失の反対語に機会利益という言葉が存在しないのは、機会とはチャンスのことであり、機会損失でチャンスを失うことはあっても、機会利益でチャンスを得たとは言わないからです。
つまり、本来得られるべきチャンスを失うということはなるべく避けるべきであり、事前に対策しておくことが重要であること。また、機会損失で失う可能性のあるチャンスとは、対策を取ることでカバーすることができることが多いということもあります。
トレーダーとしては、短期売買の場合にはエントリー機会を多くねん出することで、機会損失の影響を小さくすることが重要です。また中長期売買の場合には、IFO注文などの対策を事前に打って、ダメージの大きな機会損失を無くすことが大切です。
機会損失とは目に見えるものではありませんが、機会損失という考え方から計算する方法があります。機会損失を数値化(見える化)することで、在庫調整の際に非常に役立ちます。
東京で5本の指に入るといわれる大福屋さんを事例にして機会損失の計算方法を説明します。
この大福屋さんの看板商品は、原価が100円で1個170円で販売される豆大福で、お昼過ぎには売り切れてしまうという人気商品です。ある時、店員さんが豆大福1個を床に落としてしまいました。豆大福1個の売り損じが発生したわけです。さて、この時の損失はいくらになるでしょうか?
販売前の豆大福ですから、会計上の正解は原価である100円となります。しかし、機会損失の計算方法では、正解は100円ではなく、販売価格の170円となります。
機会損失とは、最善の意思決定をしなかったために、より多くの利益を設ける機会を失うことですから、最善の意思決定とは豆大福を販売することとなり、損失は170円と計算します。
このように、失った利益を計算するのが機会損失の計算方法です。
機会損失の考え方を利用すると、在庫切れでお客さんを逃してしまったり。生産が追い付かずに注文を断ってしまった場合の損失を計算することもできます。
お昼過ぎには完売となる人気店の豆大福ですから、落とさない限り売れていたのは確実で、170円の機会損失が発生したことになります。そのため、在庫量を適切に調整して、この機会損失を限りなくゼロに近づけなければなりません。
40代男性。大手証券会社、大手通信会社の経営管理を経てセミリタイヤ。職務経験から、広く事業や経済動向、株式・先物・為替市場に精通。長らく株式トレードを行い、暗号通貨は2017年から。仮想通貨だけでなく、ビジネスや世界マーケットを絡めた視点から大人の分析ができるビジネスマン。
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