COIN TOKYO

  • 2019/09/25
  • 2019/09/25
  • コイン東京編集部

「R3」「IBM」と3社インタビュー│大企業が推し進める"ブロックチェーン"の今後とは

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―平山さん
ほとんどの人は良くIBMを知っているんですね。なので私が担当している最新の技術などの最新の情報について説明していきたいと思います。私は平山毅と申します。IBMのデジタルイノベーション事業開発部の部長でチーフアーキテクトです。

IBMではPeerパブリッククラウドストレージの構築を戦略的に行っていて、皆さんご存知のHyperledgerを後に開発し現在はそれらを組み合わせています。
私個人の役割としては、3つのデジタルテクノロジーのメガトレンドであるブロックチェーンやAI,IoTなどを研究し、特にブロックチェーンに注力しています。

Hyperledgerでは去年からアプリケーションパッケージとしてサプライチェーンや貿易金融などのプラットフォーム構築をしています。
また、ステラと連合を組んでステーブルコインの開発にも注力をしていてそれはコンソーシアムアプリケーションとなり、「IBM Blockchain World Wire」は国際決済デジタルアプリケーションとして今年ローンチを予定しています。

―コイン東京
ありがとうございました。では次の質問に進みたいと思います。ブロックチェーンという環境におけるエコシステムはどのように機能していますか。日本では才能を持つ人材を見つけるのは非常に難しいですが…


―平山さん
ブロックチェーンのエコシステムを構築することはちょうど私がしていることです。私は元々アマゾンに居て、アマゾンとはブロックチェーンベンダーとしてIBMが一緒に仕事をしています。
他にもクライアント企業様と仕事をしていますが、そのエコシステムとしてマルチクラウドアーキテクチャを構築しています。ブロックチェーンを広める段階においては、IBMではイーサリアムやCordaの両方に対応し、クライアントのニーズに応えようとしています。

―コイン東京
IBMとは非常に評判の良い会社ですが、それに対して大きすぎ、古すぎ、過剰な官僚主義もあるということが言われています。しかし、その目的は革新することなのです。
自分のIBMでの経験に基づいてどうしてIBMはこの分野の革新でどのように重要なプレイヤーとなるのかについて少しお話していただけないでしょうか。


―平山さん
私はアマゾンという新興企業でも働いていた経験もありますが、IBMは確かに古いテクノロジーカンパニーで、そういった古いテクノロジーが最新のテクノロジーと交わるのは難しいです。そして最新のテクノロジーとこれまでのテクノロジーのアプローチは違うのも事実です。
ただIBMは多くの新興テクノロジーの研究開発する企業を買収しています。

―コイン東京
ありがとうございました。では、メンナーさんの視点から見れば、IBMのような大手企業が存在しているスペースでは協力の可能性があるのでしょうか。それとも皆はある意味で違う道を歩んでいますか。


―トムさん
いい質問ですね。この分野はまだ進化中です。面白いことに、例えばEEA(企業イーサリアム連合)とConsensys、MicrosoftとHyperledgerがそれぞれ関わっているということが見られます。R3もHyperledgerのメンバーになりました。いくつかのプロジェクトでHyperledgerと協力していますが、Fabricには関わっていません。しかしそれは将来協力関係がさらに緊密にならないといことを意味しているわけでもありません。

それに、IBMの話をすると私たちは彼らと直接的な競合関係であり、よくビジネスする機会を彼らから奪っていました。しかしIBMのサービスグループはR3に連絡を取り、Cordaのコンサルティングをしないかという話をしましたし、二社とも主にエンタープライズを代表し、暗号通貨に関わりません。また、CICSやIMSの中にあるデータを手に入れるためにIBMのメインフレームを活用しR3の取引の一部にもなっています。様々なIBMの技術を統合しているということです。
実はJAVA、メッセージキューイングやリレーショナルデータベースの使用という共通点でCorda自体とそのデザインはIBMのもののように見えるのではないかと議論できるかもしれません。そして、私たちの創始者がよく仰っていたのは完璧な世界では私たちは自然にIBMの味方になり得るということで、私たちが使っている技術やブロックチェーンの作り方などで判断すればCordaはIBMにピッタリと言えます。
残念ながらFabricはその前にリリースされたため、IBMは今ソフトウェアのプラットフォームとしてFabricにコミットしています。ただ将来はどうなるか分かりません。

―コイン東京
企業の視点からどうしてそんなことが起きたかを教えていただけないでしょうか。


―トムさん
まぁ、これは歴史的なことです。最初はビットコインが表れ、Ethereumがその次になりました。そして、Ethereumはスマート・コントラクトがあります。IBMがオプーン・ブロックチェーンと関わり始めたころ、私はまだそこに勤めていました。簡単に言えばIBMはブロックチェーンの取引の情報を共有するというところが好きでしたが、匿名性や許可不要というEthereumとビットコインの性質がエンタープライズ向けには有用ではないと考えました。

つまり、彼らは通貨やgasのことを抜き取り、Ethereumの仕組みのようなものだけをキープしました。それはFabricになりました。それは戦略的に開発したというより、プロジェクトとしてうまくいくのかを見ようと考えてその選択で進んだだけです。
その後Hyperledgerを設立しました。それがすごいいいアイデアでした。オープンソース、すべてがよかったです。他の技術も導入しました。その後R3が現れました。私たちは銀行や金融会社に代わってそのブロックチェーンという技術で彼らが入り込めるスペースがあるか判断するために活動していました。
私たちはEthereumとFabricでPOCやパイロットをしており、最終的に決めたのはKYCやAMLのような制限のある厳しく規制されている業界でそこではプライバシーの面がとても重要でした。そこで典型的なブロックチェーンを利用できなかったため、最終的にCordaで行こうと思いました。Jerry Cuomoはきっと私と議論すると思いますが、私にとってはもしIBMはもう一度その選択する機会があればFabricを元にしたデザインよりCordaを元にしたデザインという選択をするのではないかと思います。もし彼らは顧みる機会があればですね。しかし、繰り返しますがJerryの意見はきっと私と異なります。

―平山さん
そのブロックチェーンの歴史と境遇の説明は完璧だと思います。
KYC/AMLにおいて、コンソーシアム型のアーキテクチャはとても有用だと思っています。IBMではHyperledgerにてコンソーシアム型のアーキテクチャを開発していますが、改ざんが不可能で取引が追跡可能という強み、スマートコントラクトというアプリケーションレイヤーの強みを活かしていきます。

―コイン東京
ありがとうございました。お聞きしたいことはたくさんあるのですが時間がかぎられていますので、その中からいくつかお聞きしたいのですが、先ほどブロックチェーンの開発会社はその会社の規模の大小関係なく同じようなお客様がターゲットとなっているとおっしゃいましたが、今後ブロックチェーンの市場はどうなっていくとお考えでしょうか。
私はデロイトのシニアマネージャーでもあり、ブロックチェーンを推奨する立場としてブロックチェーンを良く知っていますとクライアントと話をしていましたが、それは嘘と言えるかもしれません。ブロックチェーンをどう活用するのかを100%理解できてはいませんので。(笑)
あなた方はそれぞれ強みがありますが、どのようにこの市場を見ていますか?


―トムさん
まず、この業界ではそれぞれの会社はあるプラットフォームに参加します。例えばDeloitteはFabricを選ぶだろうと思います。そして、私たちのパートナーの中でCordaをよく知っているPwCやAccentureなどがいます。また、昨日の会議中にErnst&YoungはこれからEthereumが世界を引き継ぐと主張しましたが、それには私たち全員反対意見をもっていますね。(笑)

―コイン東京
その証拠はどこにあるのでしょうか。(笑)


―トムさん
そうですね。私が言っていることが彼らに届いていないように願っています。Huaweiの社員もそう…(笑)
総じて、戦略的に複数や単一のプラットフォームを採用会社がいます。そして、いつか技術の集中が行われる可能性があります。R3はFabricを除いていくつかのHyperledgerのプロジェクトに参加しています。FabricとCordaは合併は想像しにくいためにそうなると言いたくないですが、将来は何が起きるか全然わからないですね。

QuorumはJPMCとともにまた違う革新を進めています。この業界やクライアントという点においては幸いR3には銀行と金融会社のお客様のベースがあります。そのお客様のおかげで銀行や金融会社の業界を入り込むことができました。保険会社、貿易金融、サプライチェーンもそうです。IBMも今までできたことや彼らの規模のおかげですごい影響力があります。それ以外にはWichainのような新進気鋭の技術があります。そして、彼らはどれだけ進歩しているかわからないですが、Quorumもあります。 またTaletもありますね。

ただ、この業界の中には誤解や誤報が多いと思います。もし私たちがConsensysと競争するとしたら、彼らはEthereumを中心とした視点でそれに取り組むのです。もしお客様が適当な知識がなければすべてをそのまま正しいと受け取ってしまいます。それに対して私はよくお客様に再度理解をしていただくための教育しなければならなくなるのです。

でもこのように競合することは業界全体に利益をもたらしていると思います。IBMとHyperledgerの皆はFabricを改善するために頑張っています。もちろん、様々なCordaの部分を真似しながらね。しかし、私たちは振り返り、ICOの市場の破壊後はコインとかトークンとかについて真面目に考えないといけませんでした。
そのためにコインとトークンをどのようにサポートするかという面で私たちはEthereumからのいくつかのデザインを借りる必要がありました。私たちはetherやgasなどのようなものを作るつもりがないのですが、ERC-20やERC-721というトークンで行われた作業はCordaの私たちが行っているトークンの作業に影響を及ぼしています。

最近FabricはSTKでFabTokenを加えています。色々なことが違うプラットフォームで行われており、それは大概この非常に若い業界に有益だと思います。

―平山さん
IBMにおいては、コンサルティング・テクノロジーの両サイドのビジネスを行っていて、最近では先述ですが貿易金融、病院、マイクロペイメントなどの業界の抱える問題を解決しています。
すでにある顧客基盤も競合に比べ大企業が多かったりと強力ですし、そういった点はIBMの強みです。

―コイン東京
続いてお伺いしたいのがブロックチェーンの業界ではどのように才能のある人材を見つけるのでしょうか。


―トムさん
IBMから優秀な人を盗んでいます。(笑)

―コイン東京
これはブロックチェーンのエンジニア視点の質問ですが。IBMのような大企業で働く長所とは何か教えていただけないでしょうか。また、R3で働くことの長所についても知りたいです。


―トムさん
一つ私たちのアドバンテージと言えるのは私たちのプラットフォームはJAVAで作られたため、必ずブロックチェーンのスキルを使わなければならないわけではないということです。
エンジニアを探している時に、良いプログラミングのスキル、特にJAVA、二次にC++のスキルを持つのであれば、私たちはブロックチェーンを教えることができます。Golangのプログラマーを見つけるのは大変なので、こういう長所を持っています。EthereumのためのSolidityのプログラマーも全くいないですね。
それはCordaのデザインにおける私たちのとても戦略的な決定でしたし、それはとても有益だともう証明されました。ブロックチェーンを専門にした人材を見つけるということはしません。そういう人は普通にいないのですから。

何より言いたいのは私たちの長所はブロックチェーンの経験を持っている人材を探さなくても良いので自由があることです。もしJAVAのスキルは十分に良ければ、私たちにはそれだけで大丈夫です。

―平山さん
ブロックチェーンエンジニアには2つのタイプの人がいます。ミドルウェアエンジニアというブロックチェーンを広める人たち、アプリケーションサイドのエンジニアというタイプがありますが、JavaやGolangなどの言語でコードを書けるのであれば、それで十分です。
若い人達にはチャンスが多くあると思います。彼らは最新のテクノロジーへの感受性も高く勉強を始めている人もいますが、とてもポテンシャルがあるのではと考えています。

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