2017年までの仮想通貨相場では、ガチホ、つまり現物を購入して持ち続けるだけで大きな利益をあげることができました。
このような相場のことを右肩上がりの相場といい、上昇し続けている間は現物を購入して持ち続けるだけで利益がでます。
ところが、2018年1月からは一転して下落相場がスタートし、何度か反発するものの、年間通して大きく下落することになりました。
下落相場では、現物株を購入して持ち続けることは時間とともに損失を拡大させていくことになります。
とりわけ、2017年までの仮想通貨の上昇相場を経験した人なら、売却することができずに持ち続けてしまった人も少なくないでしょう。
今回は、「空売り」の仕組みについて、初心者の方にもわかりやすいように解説していきます。
こんなケースで活用したいのが下落相場でも利益を狙える「空売り」です。
投資の基本は、安く買って高く売るということですが、これは上昇相場の際に有効な手法で、下落相場の際には、高く売って安く買い戻すことが有効な手法となります。
とはいうものの、現物相場では買いからしか入れませんので、下落相場やレンジ相場では買いだけの投資手法では非常に不利になります。
このようなことから考案されたのが空売り手法となります。空売りとは、信用取引やFXで利用可能な取引のことで、売りからエントリーしますので、下落相場で非常に有効な手法となります。
ちなみに、この空売りとは、豊臣秀吉の時代の大阪堂島米会所で始まったとされており、天候に左右される米価格に対して、少しでも早く米を購入しておきたいという米問屋のニーズから生まれた先物取引です。
先物取引やFXでは、空売りのことをショートと呼びますが、これは現物を所有していない場合や、所有していても他のところから借りて売った状態のことを指します。
空売りのことをショートというのに対して、買いのことをロングといいますが、一説によると、ポジションを持つ時間の長さをあらわしているともいわれます。
つまり、上昇相場は長い時間をかけて形成されますが、下落相場は一気に暴落することが多く、空売りは比較的短い時間で勝負がつくということを意味しています。
仮想通貨で空売りをするためには、まず口座を開設している取引所が空売りに対応しているのかを確認する必要があり、対応していない場合には空売りに対応している取引所で新規口座を開設する必要があります。
空売りは、信用取引もしくはレバレッジ取引に対応している取引所で行います。
最近では、個人投資家にはFXが人気ですが、株式でお馴染みの信用取引を提供する取引所でも空売りをすることが可能です。
信用取引は、ビットコインやイーサリアムなどの現物を所有していない状態からスタートするため、取引所から現物を借りて「空売り」します。
仮りた場合には、返済しないといけませんが、返済日までに空売りの決済を済ませる必要があります。ここが、証拠金を預けてレバレッジを掛けるFX取引との違いとなります。
一般的には、空売りができるのは、FX、信用取引、先物取引の3つとなりますが、このうち取引に期限(決済期限)がないのはFX取引となります。
仮想通貨取引所の中には、レバレッジ取引を提供しているところと、提供していないところがあります。
FX(外国為替)が個人投資家に大人気となっていることから、今後は、レバレッジ取引に対応する取引所が増えると予想されますが、空売りをするためには、レバレッジ取引に対応している取引所を利用します。
取引所によっては、レバレッジ比率は大きく異なります。
国内取引所の場合には、金融庁の影響からか現在(2019年11月時点)では4倍以下のレバレッジを提供しているところがほとんどですが、海外取引所では、100倍のレバレッジを提供しているところもあります。
その他にも、証拠金維持率やロスカットタイミングなど細かなルールが取引所によって異なりますので、利用する際には事前に確認しておきましょう。
空売りについては理解できたかと思いますが、それではどう取引したらよいのでしょうか?わかりやすく解説していきます。
空売りの注文方法には、「指値注文」と「成行注文」の2つの方法があります。取引所によっては、成行注文のことを「taker」、指値注文のことを「maker」と呼ぶこともあります。
指値注文とは、自分の希望する価格に指値して注文を出す方法のことで、市場価格に指値が達しなければ注文は執行されない仕組みです。
今後、価格が下落すると予想するケースでは、レジスタンスライン(抵抗線)近くで指値でカラ売り注文をすると有効に作用することが多くあります。
ただし、あくまで予想ですので、指値に価格が到達しない限り取引は開始されないということになります。
これに対して、成行注文とは、自分で価格は設定せず、取引価格を取引所の成り行きに任せる方法のことです。
スキャルピングやデイトレードのように、タイミングを逸したくないトレードなどでは、時価ですぐにトレード可能な成行注文が有利と言われています。
自分のトレードスタイルに応じて、いずれかの注文方法を選択できます。
空売りにかかる手数料には、以下の3つがあります。
1.取引手数料
2.スワップ手数料(レバレッジ手数料)
3.スプレッド(売買価格差)
いずれも取引所によって異なりますが、取引手数料が無料の場合にはスプレッド(売買価格差)は広めのことが多く、取引手数料が発生する場合にはスプレッドは狭くなる傾向があります。
スプレッドは、隠れた手数料ともいわれますが、取引所の主な収益源はこのスプレッド収入となることは覚えておきましょう。
スキャルピングやデイトレードをする場合には、スプレッドは最大の取引コストとなりますので、トレーダーは少しでもスプレッドの狭い取引所を選択することになります。
また、スワップ手数料(レバレッジ手数料)とは、金利手数料のことで、株式の信用取引では株を借りる金利として、FX(外国為替)では2国間通貨ペアの金利差から発生します。
仮想通貨FXの場合には、金利差は発生しませんが、レバレッジ手数料として一定のタイミングで発生します。
価格が上昇すると予想して買いエントリーしたとたんに、価格が下がり始めた・・・このような経験をしている投資家が実は大多数なのです。
つまり、逆に言うと、空売りは非常に効率の良い投資手法であり、正しく理解して利用すると大きな利益が期待できます。
上のチャートは、ビットコインの月足のチャートです。このチャートを見ると、2018年12月高値で空売りしていたら大きな収益を出せたことになります。
ところが、買い(ガチホ)で億り人になった方は大勢いますが、空売りで億り人になったという方の話はあまり聞きません。
つまり、空売りによる利益とは、一見簡単そうに見えるのですが、現物取引とは違って所有する時間やレバレッジの倍率の分だけリスクを持ち続けることになります。
スキャルピングやデイトレードを行う人が多いというのは、実はこの理由からであり、現物を所有せずに空売りから入る場合には、リスクヘッジが重要となります。
株式の空売りとは、元々はリスクヘッジ手法として誕生しました。
例えば、株式配当の権利を得るために長期保有したケースで、配当権利が得られる決算時期で株式相場が大きく下落が予想された場合、所有している株数と同じ株数を空売りする「つなぎ売り」が有名です。
このように、長期的に株式を所有していたものの、一時的な下落に対応する場合に信用取引の空売りが利用されます。
仮想通貨相場の場合ですと、2017年12月から2018年1月上旬の爆上げ相場で、さすがにやりすぎだと感じた投資家はい多かったと思われます。
ここはいったん下落しそうだが、仮想通貨はガチホしておきたいと悩んだ人も多かったでしょう。
結果的には、そのまま何もせずガチホし続けたら、儲けの大半を飛ばすことになりましたが、仮に、ここで空売りを利用していたら有効な投資手法となった可能性は高かったでしょう。
ちなみに、株の空売り(信用取引制度)には制度信用取引と一般信用取引の2種類があります。
株の信用取引というと、通常は制度信用取引のことを指しますが、これは証券取引所が指定する銘柄が対象となり、返済期限は6か月で逆日歩も発生します。
これに対して、一般信用取引とは、各証券会社が指定した銘柄が対象となり、返済期限はなし、逆日歩も発生しません。
一般信用取引とは、証券会社と投資家の相対取引(証券会社の自己受け)となり、国内取引所の仮想通貨FXも多くはこの形式となります。
空売りを利用するには、空売りなどのレバレッジ取引を提供する取引所を利用する必要があります。
初心者の方でも利用しやすいおすすめの取引所を国内・海外からそれぞれご紹介します。
まず、国内取引所のコインチェックです。コインチェックは、NEM流出事件以降にネット証券大手のマネックスグループ傘下となり、完全に新しい取引所として再生しています。
もともと人気の高い取引所でしたが、ユーザー数・取引量とも現在でも国内トップクラスで、特に初心者の方におすすめです。
レバレッジ取引は、現在は新規注文の受付は停止されていますが、すでに金融庁の認可も取得しており、大手ネット証券の子会社となったことから、近い時期に再開されると予想されます。
レバレッジ取引が再開されたらすぐに参加できるように、早めに口座開設しておくことをおすすめします。
次に、レバレッジ取引に慣れてきたらおすすめなのが、海外取引所のBitMexです。
すでに、ビットコインの全体の取引高では断トツのシェアを誇るFX専門の取引所ですが、その最大の特徴はレバレッジの倍率100倍、ゼロカットシステム(追証なしサービス)を提供していることです。
なぜこのようなサービスが提供できるのかといえば、日本の取引所ではないため、金融庁の指導を受ける必要がないからです。
ご存知の方も多いでしょうが、海外FX(外国為替)ではレバレッジ500倍前後、ゼロカットシステムは常識となっており、そのサービスを初めて仮想通貨取引所として提供していると考えるとわかりやすいでしょう。
BitMexは香港に本拠を置く海外取引所ですが、日本語対応もしており、英語が苦手だという人も安心して利用できます。
空売りのメリット、そしてデメリットについてわかりやすく解説します。
空売りにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
空売り最大のメリットは、売りから入ることができるということです。どんなに強い相場でも、上昇した相場は必ず下落するということは、仮想通貨相場でも嫌というほど経験させられました。
永遠に上昇し続ける相場でのない限り、買いから入るだけではなく、売りから入るという手法も下落相場やレンジ相場では非常に有効となります。
FXとは、証拠金取引のことで、少額の証拠金にレバレッジをかけることで大きな収益を目指すことができる取引です。
通常、現物取引の場合には一定以上の資産がないと大きな収益は目指せませんが、FXなどのレバレッジ取引を利用することで、少ない資産でも大きな収益を目指せる可能性があります。
FXなどのレバレッジ取引では、実は空売りと非常に相性が良いということができます。
何故なら、長い期間をかけて上昇してきた相場も、1日でその上昇分の大半を飛ばしてしまうことが過去には何度も起こっています。
つまり、上昇期には長い時間が必要となりますが、下落時には多くの投資家のパニック売りが出てきますので、一気に下落してしまうことが多いからです。
空売りの得意な熟練トレーダーは、実は、この大多数の投資家のパニック売り(投げ売り)を狙っているのです。
このように、空売りには一般的に短期で結果がるというメリットがあります。
空売りのデメリットにはどのようなことがあるのでしょうか?リスクヘッジの意味からも、ここはしっかり押さえておきましょう。
現物取引とは異なり、レバレッジ取引では証拠金維持率が取引所によって決められており、一定の水準以上の損失が出ると、追加で証拠金を入れる(追証)必要があり、さらに損失が膨らむと強制ロスカットで自動的にポジションが解消されてしまいます。
なぜ、そのようなことをするのかというと、損失が膨らむと証拠金以上の損失が出ることになり、その損失とは投資家の取引所に対する負債になってしまうからです。
このような事態を避けるために、ロスカット制度が設けられているのです。
ただし、相場が大きく急変して価格が付かない場合などには、ロスカットも作動せずに大きな損失が出る可能性もあります。これに対応するのが、海外取引所で提供されているゼロカットシステム(追証なしサービス)です。
空売りとは、下落相場やレンジ相場で売りから入ることで有効な投資手法です。
現物取引だけだと、上昇相場には対応できても下落相場で効果的に対応することが難しくなります。
空売りの仕組みを理解して有効活用することで、上昇相場でも下落相場でも対応可能となり、リスクヘッジとして利用したり、収益を目指すことが可能となります。
40代男性。大手証券会社、大手通信会社の経営管理を経てセミリタイヤ。職務経験から、広く事業や経済動向、株式・先物・為替市場に精通。長らく株式トレードを行い、暗号通貨は2017年から。仮想通貨だけでなく、ビジネスや世界マーケットを絡めた視点から大人の分析ができるビジネスマン。