初心者トレーダーが初めて見るテクニカル分析が、移動平均線といっていいほど、最も有名でありかつ利用されているテクニカル手法です。
誰もが知っているテクニカル分析であり、また単純なものであるため、ありがたみを感じないという人も多いのではと思われますが、実は、常勝トレーダーの中には、この単純かつ誰もが知っている移動平均線をメインとして利用している人も多くいます。
誰もが知っている移動平均線ですが、使い方はトレーダーによって異なります。つまり、同じ移動平均線でも使い方や設定次第で、勝ち組トレーダーにもなれますし、また負け組トレーダーとなることもあるのです。
そんな誰もがその利用法や設定次第では、勝ち組へと導いてくれる移動平均線は、株式のみならず、ビットコイン、FX、バイナリーなど投資対象を選ばないという大きな特徴があります。
移動平均線とは、過去の一定の期間のレート(価格)の平均値を求め、それを結んでチャートに表示したものです。
表示された移動平均線から、相場のトレンドを判断し、売買サインとして利用します。
移動平均線を極めるだけで、他のテクニカル分析は必要なくなるといわれるほどですが、移動平均線には3種類あり目的に応じて使い分けることができます。
まずは、3種類の移動平均線を理解しましょう。
一般的には、移動平均線というと、単純移動平均線(SMA)のことを指すことが多いですが、その名の通り一定期間の終値を平均して表示させたものです。
よく使われる移動平均線に20日移動平均線や25日移動平均線がありますが、これらは20日間、25日間の終値の平均値をチャート上に表示したものです。
最もよく利用されており、過去の相場と現在の相場を比較して強いのか弱いのかを見たり、トレンドが発生しているのかを判断するのに適していますが、急な相場の変動に追随できないというデメリットがあります。
ちなみに、以前は土曜日も相場がオープンしていましたので25日移動平均線がよく利用されていましたが、週休2日になり土曜日が休場となって以来は20日移動平均線が多用されるようになったという説があります。
関連記事:トレンドラインとは-正しい引き方/ブレイクした際などトレード手法を解説
加重移動平均線(WMA)とは、単純移動平均線(SMA)のデメリットをカバーするため、より直近の価格に比重を置いたものとなります。
例えば、5日移動平均線の場合、5日目の価格を5倍、4日目の価格を4倍、3日目の価格を3倍、2日目の価格を2倍というように、直近の価格にその日数をかけることで価格に重みが増します。
ただし、単純移動平均線(SMA)よりは感度が良くなるものの、相場の急変に対する反応が良いというわけではありません。
最も多く利用される単純移動平均線(SMA)では初動が遅れてしまう、かと言って単純移動平均線よりも反応をよくした加重移動平均線(WMA)でもまだ物足りない、そこで登場するのが指数平滑移動平均線(EMA)です。
加重移動平均線をさらに反応良くしたものが指数平滑移動平均線で、これを活用することで相場の動きをいち早く反応させることが可能となります。
もちろん、反応は良くなりますが、他のテクニカル分析同様にその分だけダマシが多いというデメリットも共存します。
3種類の移動平均線には、メリット・デメリットがありますので、大切なことは相場の状況に応じて使いこなせるようになるということです。
各時間足チャートにおける日足移動平均線の設定はどのようにするのでしょうか。
例えば、200MA(移動平均線)の場合には表示されるのはローソク足200本分の移動平均線となります。
これを200日に設定したい場合には、日足チャートの200日を設定することになり、4時間足の場合では1200を設定します。
関連記事:ローソク足パターン重要8選-Fxの売買シグナルの見極め,傾向分析の攻略を解説
FX5分足チャートにおける日足移動平均線の設定はどのようにするのでしょう。
5分足チャートに200日移動平均線を設定する場合には、5分を200日に換算します。
1時間=5分×12
1日=1時間×24
200日=1日×200
12×24×200=57600となり、57600本のローソク足が必要となります。
15分足チャートに日足移動平均線を載せる設定を、同じく200日移動平均線の設定します。
1時間=15分×4
1日=1時間×24
200日=1日×200
4×24×200=19200となり、19200本のローソク足が必要となります。
同じく1時間足チャートに200日移動平均線をのせるには以下のように設定します。
1日=1時間×24
200日=1日×200
24×200=4800となり、4800本のローソク足が必要となります。
同じく4時間足チャートに200日移動平均線をのせる場合の設定は以下のようになります。
1日=4時間×6
200日=1日×200
6×200=1200となり、1200本のローソク足が必要となります。
上のチャートは、ビットコインの4時間足チャートに200日移動平均線をのせています。いかに多くの投資家が200日移動平均線を意識しているのが見て取れます。
このように、時間の刻みを計算して組み合わせると、チャートの読解が非常に便利になります。
関連記事:ローソク足の見方-売買のサインとなる形や色のシグナルの意味等の基本まで解説
トレードスタイルにおける、移動平均線のおすすめの期間を説明します。
短期移動平均線を利用するケースでは、短期間でのトレンドを把握することが重要です。
中長期の移動平均線では、短期的なトレンドの把握が難しくなり、短期トレードにおけるエントリーポイントや決済ポイントが見つけにくくなります。
短期移動平均線のおすすめの期間設定は「5.15.25」となります。
上のチャートは、15分足のビットコインのチャートに、5分足と25分足の移動平均線をのせています。
中期移動平均線におすすめの期間設定は「50.75」です。
中期といっても、デイトレードよりも長い期間、つまりスイングトレードを含む場合もありますので、数日から数週間で有効な期間です。
上のチャートは、ビットコインの4時足チャートです。2019年11月に入り、50移動平均線がレジスタンスラインとなって下落相場を示唆していましたが、その後に80万円台の強力なサポートラインを下抜けています。
関連記事:スキャルピングとは-FXトレードの手法のコツを解説(pips/分足/テクニカル指標の設定等)
長期移動平均線も期間によりますが、日足から週足、または月足を利用します。おすすめの期間設定は「100.200」となります。
上のチャートは、ビットコインの日足のチャートですが、100日移動平均線と200日移動平均線のGC(ゴールデンクロス)、DC(デッドクロス)が有効に機能しています。
また、200日移動平均線とは、多くの投資家が注目する移動平均線となり、株式、FX、仮想通貨でも使える期間設定です。
移動平均線を利用したテクニカル分析にグランビルの法則
があります。基本中の基本のテクニカル分析ですが、この法則を理解しておくと、トレードの際に非常に役に立ちます。
グランビルの法則とは、簡単に言うと、移動平均線の⓵向き②角度③ローソク足との位置関係に着目し、トレード手法として確立されたものです。
関連記事:グランビルの法則とは-FXや株の勝率を上げるインジケーターの設定を解説
グランビルの法則を利用する際の移動平均線の設定方法について解説します。
グランビルの法則の考案者ジャセフ・E・グランビルは、200日移動平均線に大きな利用価値があることに気づき、基準とする一つの移動平均線に短期線と長期線の2本を加えて、3本の移動平均線で価格の動きを追う「グランビルの法則」を考案します。
グランビルの法則を利用する際の重要なポイントは、「大勢が意識する水準を追う」という考え方です。
大勢が意識する水準は、サポレジ(サポートライン・レジスタンスライン)となることが多く、同時にトレードポイントとなることが多くあるのです。
従って、グランビルの法則で利用する移動平均線の期間は、最も一般的と言われる数値を採用することが重要です。
論より証拠、執筆時点でのビットコイン4時間足のリアルタイムチャートに使って、グランビルの法則の移動平均線を設定してみます。
上のチャートは、2019年10月後半から執筆時点(11月25日)までのビットコイン4時間足チャートです。
グランビルの法則を利用するために、25移動平均線、75移動平均線、200移動平均線の3本をのせています(25MA、75MA、200MAと書かれることも多くあります)。
このケースは、数日でトレードを完結させるスイングトレードで利用するグランビル法則で、4時間足に3本の移動平均線を利用してビットコインの価格の変化を追っています。
上記でも解説していますが、25日移動平均線ではなく、4時間足のローソク足25本の移動平均線であることを理解しておきましょう。
さて、実際のビットコイン相場を見てみると、10月後半での中国習主席の発言でビットコインの価格は急騰し、25、75、200移動平均線を一気に上抜けて上昇相場を展開しています。
急騰したものの4時間足のローソク足では長い上ヒゲを残し、高値圏でのもみ合いが続きます。
そして、最初の⇩のポイントがやってきます。
このポイントは、50移動平均線がレジスタンスラインとして機能したポイントで、売りのエントリーポイントとなりました。
次に、2つ目の⇩のポイントがやってきます。
このポイントは、25日移動平均線と50移動平均線のデットクロスが発生している場面で、売りのエントリーポイントとなります。
そして3つ目の⇩のポイントがやってきます。
ここは重要なポイントとなりますが、大勢が強く意識している200移動平均線でサポートされるのかどうかという場面です。
結果的には、サポートラインとなることはなく、あっさりと下抜けることとなり、ここで多くのトレーダーは10月後半から急騰したビットコインの上昇相場は終了し、下落相場が始まるのではと考えだします。
ここから先、ビットコイン相場が再び上昇相場へと変化するためには、25、50、200それぞれの移動平均線を上に抜いていくことが必要となります。
上記で説明しましたように、グランビルの法則を利用することで、買い・売りそれぞれのエントリーポイントを見つけることができます。
ただし、重要なことは、大勢がどれほど強く意識しているかということであり、教科書通りにエントリーポイントでトレードすることではなく、より強く意識されるポイントを見つけるということです。
上記の買い4通り・売り4通りのエントリーポイントを解説していきます。
まずは買いエントリーポイントから
①移動平均線が上向きになりつつ、価格が移動平均線を下から上に抜けたポイント
実際の相場では、移動平均線が下向きから平行な場合には、底値を付けて何度か移動平均線がレジスタンスラインとなり跳ね返されたものの、上向きになりつつレジスタンスラインを上抜けると強いエントリーポイントとなります。
②ここは典型的な押し目買いポイントのことです
移動平均線が⓵のように上昇中に、一時的に移動平均線(ここではサポートラインに変化)を下抜けるものの、再度上昇して移動平均線を上に向けた場合にはエントリーポイントとなります。
③ここも押し目買いのポイントとなります
上昇中の価格が、大勢が注目するサポートライン(移動平均線)を下抜けることなく、サポートされた場合には上昇トレンド継続となり、押し目買いポイントとなります。
④乖離率が大きな場合の短期買いポイント
移動平均線も価格も下落中に、移動平均線と価格に大きな乖離が発生した場合には、売られすぎと判断し短期買いのポイントとなります。
次に、売りエントリーポイントを解説します。
⓵上昇相場から下落相場へ転換した際の新規売りエントリーポイント
上昇中には上向きだった移動平均線が水平に転換し、価格(ローソク足)が下落し始めて移動平均線を下抜くと、新規売りのエントリーポイントとなります。
②戻り売りのポイントです
移動平均線が下降中に、一時的に上昇して移動平均線を上抜いても、移動平均線が下向き(下降中)の場合には再度下落する可能性が高いと判断して売りポイントと考えます。
③レジスタンスラインに跳ね返されたポイント
大勢が意識するレジスタンスラインに跳ね返されたポイントは、絶好の戻り売りポイントとなります。下落相場の初期段階では売り増しポイントにもなります。
④乖離率が大きな場合の短期売りポイント
移動平均線も価格も上昇中に、移動平均線と価格に大きな乖離が発生した場合には買われすぎと判断し、短期の売りエントリーポイントとなります。
世界中のトレーダーが利用しているMT4でも移動平均線は簡単に設定することができます。
期間も自分の好きな数値を入力して設定することが可能です。
MT4では、iOS、Androidいずれのアプリにも提供されており、移動平均線を表示することが可能です。
スマホMT4 アプリには、30種類のインジケーターが搭載されており、移動平均線については細かな設定までできるようになっています。
インジケーターを表示したい場合には、画面上部にあるフォルテマーク(f)のアイコンをタップし、「メインウィンドウ」を選択すると、30種類のインジケーターがアルファベット順に並んでいます。
ここからMovingAverage(移動平均線)を選択します。
MovingAverage(移動平均線は)は、設定にあるメソッドを変えることで、期間など自分好みの設定にカスタマイズが可能です。
週足移動平均線では、長期トレンドを判断するのに役立ちますが、おすすめの期間設定の数値は「13.26.52」となります。
上のチャートは、ビットコインの週足チャートに、13週移動平均線、26週移動平均線、52週移動平均線をのせています。
直近では、2019年4月後半に13週移動平均線と26週移動平均線がゴールデンクロスし上昇トレンドを形成しますが、10月後半には同じくデッドクロスを示現しており、下落相場を示唆しています。
デッドクロスの示現は必ずしも下落相場を示すわけではありませんが、前回のデッドクロス示現時(2018年3月)には、その後に52週移動平均線がサポートラインとなり、一時的に上昇に転じますが、その後52週移動平均線を下抜けて下落相場となっています。
今回は、現時点で52週移動平均線を下抜いており、ここがレジスタンスラインとして機能するようだと、下落相場が続くことになります。
今後、この52週移動平均線の上に行くのか下に行くかで、ビットコインの相場が決まりそうです。
週足移動平均線よりもさらに長期の予測をするには、月足移動平均線を利用します。月足移動平均線でのおすすめの期間設定の数値は「12.24.60」となります。
月足の12とは12か月=1年、同様に24は2年、60は5年間を表します。
仮想通貨相場は歴史が浅いため、あまり長期予測するには適していませんが、株式や為替相場で大注目される1年移動平均線はビットコインなど有効に機能しています。
上のチャートは、ビットコインの月足チャートですが、2018年6月に1年移動平均線(赤色)を完全に下回ってから長期下落相場となります。
その後低迷相場が続きますが、2019年4月上旬に1年移動平均線を上回るってから長期下落相場が終了し、5月には一気に150万円近くまで急騰しています。
つまり、1年移動平均線の上に価格がある場合には上昇相場、下に価格がある場合には下落相場となっているのですが、執筆時点(11月25日)にはこの1年移動平均線を下抜いています。
今月末の価格が75万5千円前後にある1年移動平均線の上で引けるのか、下で引けるのか注目している人が世界中にいるはずです。
関連記事:暗号資産とは仮想通貨の正式名称-今後予想される税制の動き等ニュースを詳しく解説
FXトレードに多い、スキャルピングやデイトレードの場合の移動平均線の期間設定はどうでしょう。
長い足では実際の相場とのタイムラグがあるため、移動平均線は短期トレードでは利用しずらいという指摘もありますが、それも期間設定次第ということになります。
スキャルピングやデイトレードで移動平均線を利用する場合のおすすめの期間は、「5.10.15」あるいは「5.20.40」などとなります。
1分足や5分足で利用する場合には、当然ダマシも多くなりますが、他のインジケーターやオシレーターをフィルターとして利用したり、サポレジラインとして有効に機能するものを見つけることが重要です。
為替FXと同じように、仮想通貨相場でも個人投資家らには買いだけではなく売りからもエントリーできるFXが人気化しつつあります。
国内取引所のみならず、BitMexやあらたにBinanceも参入してきていますので、個人投資家にとってはFXトレードがメイン市場になってくると思われます。
FXトレードの際には、移動平均線はどのように活用されるのでしょうか?
関連記事:仮想通貨FXとは-レバレッジ取引のやり方~おすすめ取引所/税金対応を解説
すでに上記のチャートで何度も登場しているように、異なる時間帯の移動平均線によるゴールデンクロスのタイミングは買いエントリーポイントとなります。
ただし、時間軸が短くなるほどダマシも増えますので、他のインジケーターやオシレーター系の指標をフィルターとして活用することが重要です。
関連記事:オシレーターとは-FXでおすすめの使い方やオシレーター系指標の種類を解説
同じように、デッドクロスが発生した場合には、売りエントリーポイントとなります。
こちらも、デッドクロス=売りサインというわけではありませんので、他のテクニカル指標と組み合わせて利用することが大切です。
よほど長期の移動平均線でもない限りは、それぞれの移動平均線と相性の良いオシレーター系指標
を活用することが重要です。
短期トレードの場合には、RSIやMACDなどのダイバージェンスと組み合わせたりするのが人気です。
関連記事:ダイバージェンスとは-意味やFXトレードの手法/MACDインジケーターを紹介
移動平均線を水平線やトレンドラインと組み合わせて利用する手法も有効です。
とくに、移動平均線と水平線やトレンドライン
が同水準の価格帯の場合には、レジスタンスラインとなったり、サポートラインとなることがしばしばあります。
移動平均線は、単独でもサポートラインやレジスタンスラインとして機能することが多くあります。
特に、過去に何度ももみ合っている水準や、あるいは、すでにサポートラインやレジスタンスラインとして機能している場合には、何度も機能することが多く、いったん突破された場合には、逆の作用として機能することが多くあります。
例えば、20日移動平均線がサポートラインとして何度も機能している場合、いったんサポートラインとして突破されると、今度はレジスタンスラインとして機能することが多くあります。
この際には、20日移動平均線の向きも非常に重要になることを復習しておきましょう。
グランビルの法則のところで解説しましたが、移動平均線との乖離率が大きくなった場合には、それぞれ売られすぎや買われすぎと判断して、逆張りエントリーポイントになります。
多くの投資家がこの乖離率に注目していますので、通常は、一定の乖離率まで広がると逆張りエントリーが急増してきますので、過去にどのくらいの乖離率で反発するのかを知っておくと有利にトレードができます。
パーフェクトオーダーとは、短期・中期・長期の3本の移動平均線が同じ傾きで並行している時のことを指します。
非常にバランスの良い状態で、順調に相場が上昇している、あるいは下落していると考えられ、比較的安心してトレンドに乗れる状況であることを指します。
パーフェクトオーダーを発見した場合には、成行で飛び持っても良い場面と考えられます。
MACD
とは、2本の移動平均線の乖離を示したMACDラインと、そのMACDラインの移動平均線を示したシグナルラインから構成されます。
この2本のラインのゴールデンクロスやデッドクロスがエントリーポイントとなる可能性を持ちます。また、ダイバージェンスが発生している場合には相場の勢いが弱まっていることを示します。
上のチャートは、ビットコインの5分足チャートにMACDをつけています。
ダイバージェンスが発生し、下落トレンドの勢いが弱まったところからのゴールデンクロス発生で、短期上昇トレンドが発生しているのが見て取れます。
40代男性。大手証券会社、大手通信会社の経営管理を経てセミリタイヤ。職務経験から、広く事業や経済動向、株式・先物・為替市場に精通。長らく株式トレードを行い、暗号通貨は2017年から。仮想通貨だけでなく、ビジネスや世界マーケットを絡めた視点から大人の分析ができるビジネスマン。