COIN TOKYO

  • 2020/07/10
  • 2020/07/10
  • コイン東京編集部 ライター兼トレーダー 佐藤希

IPFSとは?最新動向やIPFSとブロックチェーンの関係などを解説

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IPFS
ネットワーク関連の話題が出ると「IPFS」というワードを耳にすることがあります。IPFSとは次世代のネットワークにおいて重要な役割を果たすと考えられている重要技術です。今回は暗号資産にも関係があるIPFSについて詳しく見ていきましょう。IPFSでどのような世界が開けるのか気になっている人は必見です!

IPFSとは?「新しいネットのインフラ」

IPFSのネットワーク

IPFS(Inter Planetary File System)を一言で表現すると「分散型ファイルシステム」です。分散型ファイルシステムとは、これまでのように中央サーバにデータを保管してそれぞれのデバイスからサーバにアクセスしてファイルを操作する仕組みとは異なります。

IPFSネットワークにおいて、データを保有するのはネットワークに参加する個人/法人のデバイスなのが大きな違いといえるでしょう。IPFSが解決するこれまでのネットワークにあった問題点は以下の通りです。

■IPFSが解決する問題点

  • サーバへのアクセス集中を防ぐ

  • データが改ざんされることを防ぐ

  • 政府や公的機関からの検閲を防ぐ

  • 耐障害性を高められる


それぞれのメリットについて1つずつ簡単に見ておきましょう。より安定したシステムを構築し、障害に強い未来のネットワークを構築するのに役立つ重要な技術です。

サーバへのアクセス集中を防ぐ

重要性の高いデータや時事性が高いデータにアクセスする場合、従来のクライアント-サーバ型ネットワークではどうしてもサーバにアクセスが集中します。サーバの処理能力の限界を超えるとリクエストを処理できなくなり、エラーが発生するのが特徴です。

何らかのサイトにアクセスしたときに、混雑によってつながらなかった経験がある人もいるのではないでしょうか。

IPFSではデータがネットワーク上に分散しているため、特定のノードにアクセスが集中することを防げます。したがって、アクセスするユーザーが多くなっても安定した通信を確保できるでしょう。

データが改ざんされることを防ぐ

中央サーバにデータが集中している場合、悪意のあるユーザーがサーバのセキュリティを突破して侵入したりサーバ管理者に悪意があったりするとデータが改ざんされます。場合によってはどこがどのように改ざんされたのかさえわからないこともあるでしょう。

IPFSネットワークではデータはハッシュ値に変換して保存されます。データを改ざんすればハッシュ値が変化してすぐに判明するため、不正に強くなるでしょう。データ自体が分散化しているため、まとめて改ざんするような不正も行いにくくなっています。

そのため、スタンフォード大学が進めるENCODEという人間のゲノムデータをパブリックな状態でセキュアに保存するためのプロジェクトにもIPFSの技術は利用されています。

政府や公的機関からの検閲を防ぐ

一部の国家は、インターネット上の情報を検閲するためにさまざまなシステムを構築しています。これまでのネットワークでは、政府にとって不都合なデータがある場合はそのデータを保存しているサーバへのアクセスを遮断すれば国民を遮断できます。

IPFSネットワークはP2Pを使用した分散型ネットワークなので、特定のユーザーへのアクセスが遮断されても別の経路で目的のデータにアクセスできます。参加者が多ければアクセス経路は膨大な数になるため、検閲して全て遮断するのはほぼ不可能でしょう。

政府の検閲から正しい情報を守り、当該国の国民がアクセスできるようになるのも大きなメリットです。

耐障害性を高められる

クライアント-サーバ型ネットワークでは、サーバがダウンすると保存されているすべての情報にアクセスできなくなります。IPFSではサーバを利用しないネットワークなので、サーバダウンなどサーバに起因する障害は発生しません。

世界中に分散している全てのノードが同時にダウンすればIPFSネットワークでも利用できなくなりますが、そのような事態が起きる可能性はほぼないといえるでしょう。クライアント-サーバ型ネットワークに比べて耐障害性を大きく高められるのは大きなメリットです。

IPFSとブロックチェーン

Blockchain - IPFS

IPFSネットワークにおいて重要な役割を果たすのが「ブロックチェーン」です。暗号資産などでよく耳にするブロックチェーンですが、万能なものではなくいくつかの問題点があります。主な問題点は次の通りです。

■ブロックチェーンの問題点

  • スケーラビリティ問題

  • データサイズが大きいファイルを扱いにくい


いずれもブロックチェーンを発展させるためには解決しなければならない問題なので、解決は急務です。IPFSを活用するとどのように解決できるのかを見ていきましょう。

スケーラビリティ問題

スケーラビリティ問題とは、コンセンサスアルゴリズムやブロック生成速度などがボトルネックとなってブロックチェーン上の通信が混雑することです。スケーラビリティ問題を解決するためには処理速度を向上させなければなりません。

IPFSが提供する分散型ストレージを利用してブロックチェーンの性能を向上させることにより、スケーラビリティ問題を緩和することに期待できるでしょう。

データサイズの拡大

IPFSが大きな力を発揮するのが、取り扱いできるデータサイズの拡大です。ブロックチェーンにはブロックサイズやブロックチェーン全体のファイルサイズに制約があり、2020年時点では非常に小さくなっています。(ビットコインで1MB)

IPFSでは参加者のストレージを共有のストレージとして活用してデータを保管するため、うまく活用すれば取り扱えるデータサイズを拡大できるでしょう。分散型のシステムなのでデータを効率的に取り扱え、容量に余裕ができます。

容量が大きくなればブロックチェーンにさまざまなシステムを実装することも可能になるため、ブロックチェーンの発展にも役立つでしょう。

続々登場するIPFSプロジェクト

Origin Protocol

IPFSは将来有望な技術なので、これを利用するプロジェクトが続々登場しています。登場しているプロジェクトには以下のようなものがあるので、簡単にチェックしておきましょう。

IPFSプロジェクト発行の仮想通貨も

IPFSを利用した仮想通貨(暗号資産)も存在しています。代表的な暗号資産にはFilecoinがあります。Filecoinについては後ほど詳しく紹介するので、ぜひチェックしておいてください。

主要プロジェクトを紹介

他にもIPFSを利用したプロジェクトはいくつかあり、その中でも有名なものは以下の通りです。

■IPFSを利用したプロジェクト

  • ORIGIN

  • uPort


それぞれについて簡単に見ておきましょう。

ORIGIN

ORIGINはエンドユーザー同士が商取引を行うためにプラットフォームです。ブロックチェーンを利用して売買を完結させられるため、通貨の交換や契約手続きなどを簡素化できます。

ORIGINはIPFSとETHのブロックチェーンを利用して提供されるものです。これによって大量のデータを取り扱えるようになり、取引に役立てられます。

uPort

uPortとは国際的なIDサービスとして開発されたDAppsです。ETHのスマートコントラクトを利用しているサービスですが、識別子をuPort上に保存することでIDを提供しています。

IPFSをデータ管理に役立てることを予定しているため、分散型クラウドストレージによる大容量化などが役立つでしょう。

Filecoin(ファイルコイン):プロトコルラボが率いる注目プロジェクト

Filecoin

IPFSを利用したプロジェクトで最も有名なのが「Filecoin」なので、詳しく見ておきましょう。なぜFilecoinが注目されているのか、どのような将来に期待できるのかを紹介します。

IPFS市場が拡大とFilecoinへの期待

IPFSは分散型クラウドストレージですが、データセンターやビッグデータで活用されることが期待されています。クラウドストレージなどのオンラインサービス経由で大量のデータが送受信されているため、IPFSの大容量分散型クラウドストレージは大いに役立つでしょう。

Filecoinは世界規模のストレージ管理システムを構築することを目標としています。ローコストでハイセキュリティ、ハイパフォーマンスのクラウドストレージができればさらに発展していくでしょう。

今後はますます大容量になることが予想されるため、Filecoinの将来性には十分に期待できるでしょう。

ETHがIPFSを採用

IPFSネットワークがさらに多くのユーザーに注目されるためには、注目度の高いシステムに採用される必要があります。さまざまなシステムをブロックチェーン上に実装するときには、イーサリアムのスマートコントラクトを利用することが多いのが特徴です。

2020年4月時点でイーサリアムの機能の一部がIPFSネットワーク上で運用されているため、こちらについてチェックしておきましょう。

ENSをIPFSネットワーク上に実装

ENS(Ethereum Name Sysetm)とはブロックチェーンアドレスを割り当てるシステムで、テキストの羅列で表記されていたイーサリアムアドレスを人間が読みやすい形のドメインと紐付けできるのものです。

一例として、「xxxxxxxxxxdd8f6d63cf94ff7fa3ad50xxxxxxxxxx」のような形のアドレスを「abcde.eth」のようなわかりやすいアドレスと紐付けられます。インターネット上のIPアドレスをURLと結びつけるDNSのようなものと考えるとわかりやすいでしょう。

ドメインの売買も行われるようになっているので、今後さらに注目される可能性が高いと考えられます。ENSのユーザーが増えれば同時にIPFSの注目度が上がるでしょう。

IPFSは最終的にはHTTPに代わるか

HTTP Protocol

IPFSは中央集権的なHTTPにとって代わる技術なのか?というと、実は多くの技術者はそうではないと考えています。

HTTPにはHTTPの良さがあるのです。
しかしHTTPが現在採用しているクライアントサーバー型という中央集権的なファイル管理方法は上記で見たような問題があるため、IPFSにとって代わられると考えられます。

IPFSとHTTPはそれぞれの良さを残して、共存しつつも、さらに安全で、ユーザーにメリットのある形で進化していくと考えられています。

変革には長い時間がかかるものですが、IPFSがインターネットのファイル管理方法の中心となった未来では、国によるインターネット・情報の遮断や、悪意のある人間による攻撃はほとんど不可能となり、より多くの力が私たち一般個人に広がります。

IPFS技術や、それらを牽引するFilecoinなど有望な技術は今後も引き続き注目です。。

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