暗号資産では、送金するときに秘密鍵が使われる。秘密鍵は、銀行通帳に対する銀行印みたいなものである。厳重に保管しなければいけないが、送金で使用するものなので、厳重すぎると使い勝手を著しく悪くするだけになる。とりわけ、暗号資産取引所は頻繁に送金を処理する必要があるので、秘密鍵を完全隔離しておくわけにはいかない。
これらを踏まえると、暗号資産の秘密鍵を安全に保管しておくには限界があるということだ。そうなると、別のアプローチが必要になってくる。理想的には、第三者が勝手に送金を実行したときに、それを検知して止めることができれば良いはずである。残念ながら、暗号資産は送金が実行された時点で既に打つ手がないものだ。そう、Bitcoin Vault(ビットコイン・ボルト)を除いては。
Bitcoin Vaultは、連続発明家及び起業家であるEyal Avramovichによって立ち上げられたプロジェクトである。Eyalは、マイニングのホスティング企業の大手であるMINEBESTの創業者としても知られている。
よく誤解される点として、Bitcoin Vaultはビットコインのフォークであると思われることが多いが、これは間違いである。ビットコインをベースとして作られた完全に新しいブロックチェーンであり、既存のビットコインASICを使ってマイニングをすることができる、マイナーフレンドリーなブロックチェーンである。
Bitcoin Vaultの最大の特徴は、送金を実行した後にそれを取り消すことができる点にある。Bitcoin VaultのコインであるBTCVの送金が実行されると、本来のウォレット所有者に警告が送られ、実際に送金が実行されるまで144ブロック分の猶予期間が設けられる。これは約24時間に相当する。もし、ウォレット所有者が送金が不正だと判断した場合、別の秘密鍵を用いることによって送金を取り消すことができる。
このようなことを実現できるのは、BTCVが3つの秘密鍵で構成されているからである。具体的には、以下の3種類になる。
標準プライベートキーは、ウォレットへのアクセスやBTCV残高の確認、通常送金を実行するための秘密鍵である。この秘密鍵で送金が実行された場合、144ブロックが生成されるまで送金が一時保留される。本来のウォレットの所有者は、キャンセルトランザクションキーを使うことにより、通常送金をキャンセルし、資産を保護することが可能になっている。
しかし、このままだと送金が完全に実行されるまでの待ち時間が長く、すぐに送金したい場合に支障が出てくる。そこで、Bitcoin Vaultでは標準プライベートキーと高速トランザクションキーの2つを利用した時のみ、1ブロック以内の送金を実行することができる。つまり、10分以内には送金が確定できるということだ。
Bitcoin Vaultは、11月にハードフォークを伴う大型アップグレードを予定している。このハードフォークは、チェーンの分岐を伴わず、古いチェーンから完全に新しいチェーンに乗り換えるというものだ。
アップグレードでは、以下の2つの新機能が盛り込まれる予定である。
これは、前述のBitcoin Vaultの最もコアな機能であり、この機能が実装されることでBitcoin Vaultが、真の意味で保管庫(=Vault)となることになる。暗号資産で唯一、通常送金のキャンセル機能がついた安全な資産保管を実現することができるようになる。
マージマイニングが実装されると、BTCVマイニングの計算結果を利用することで他の暗号資産をマイニングすることができるようになる。これは、同時にマイニングする他の暗号通貨に恩恵があり、既に十分高いBTCVのハッシュパワーのセキュリティを借りることができるため、51%攻撃を防ぐことにつながる。
このように、Bitcoin Vaultは誕生から約1年で主要なマイルストーンをすべて達成し、真に安全なブロックチェーンとしてのリニューアルまで僅かとなっている。また、Bitcoin Vaultは2回目のマイニング報酬の減少期(ブロック56,450)が近づいていることもあり、Bitcoin Vaultは様々な側面で節目を迎えているといえる。
コア機能が動き出した後にBitcoin Vaultにどのような市場評価が下るのか?まさにこれからが正念場だ!
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